※※第251話:Make Love(in Beach).150
土曜日の昼下がり、ナナ宅はなかなか賑やかとなっていた。
「はっ……花子ちゃんも豆ちゃんも、可愛すぎる…!天使だ…!」
わんこたちを預かったわんこ大好きなナナ父は、感涙に噎せている。
今週はきっちり週休二日制(ブラックになっていないときはたいてい土日休み)が守られて良かったと、心底思っていた。
ナナ父にとって花子は天使そのもので、新しくお目にかかれた豆も天使そのものである。
娘が描いた場合はアザラシになる天使という存在は、父にとっては犬だった。
「良かったわね、雅之。今現在海にお泊まり濃厚デートに行っているナナと薔くんは、“孫”という名の天使もそのうち連れて来てくれるわよ。」
わんこたちに共に戯れてもらっている夫を見下ろし、堂々と言葉にしたナナ母は二秒間に一粒くらいの速度でアポロチョコレートを頬張った。
「それは、可愛すぎるとは思うんだけど、なんだか複雑だよハニー!」
娘を遠くに感じたナナ父の感涙は、ただの涙に代わりそうになる。
隙を見て、努めてはしゃいでいたわんこたちは、フゥと一息ついている。
今日はナナ母の言葉通り、ナナと薔は海へ(濃厚)お泊まりデートに出掛けたために、花子と豆はナナ宅で一泊することになっていた。
「雅之、五箱分くらい一気に流し込まれたいの?」
「ごめんなさい……もう二度とハニーの嫌いな野暮なことは言いません……」
複雑という野暮な言い回しをした父はアポロチョコレートの箱を五つ揃えて見せつけられ、ヴァンパイアと言えどもさすがに一時窒息はするだろうと怯えて謝罪をした。
ちなみに母は、今のお気に入りはアポロチョコレートなので大量に買い置きをしてあり、五箱を一気に夫に味わわせてあげてもまったく惜しくはなかった。
ナナ父は本日も絶好調に、愛する妻の尻に敷かれている。
「ナナはきっと、薔くんというお父さん似のそれはそれは美形な子供を連れてきてくれるわよ、私達にとってはすなわち、孫。」
“孫”という単語を強調したナナ母は、残りのアポロチョコレートを一気に頬張り、
「そ、その通りだね、ハニー……」
もう何も複雑な心境は返せないナナ父は、いつの間にか床にちょこんと正座をしていた。
わんこたちはそろそろ、お昼寝タイムに突入している。
「花子ちゃんと豆ちゃんは眠いようだから、雅之もこっちで大人しくアポロチョコレート食べなさい。」
「そうするよ、ハニー…!」
やがてナナ母はナナ父を連れて、キッチンのほうへと向かって行った。
窒息させる目的ではなくアポロチョコレートを食べさせてもらえるナナ父は、妻の優しさに感動しすぎて再び感涙に噎せている。
ナナ宅も楽しい休日を過ごせそうな予感です。
[ 309/537 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る