※※第248話:Make Love(&Sex aid).27
「やっと今日でテストも終わりですよ!」
登校途中に、まだテスト期間は一日を残しているにも拘わらずナナは達成感に満ちていた。
テスト勉強をがんばらされた甲斐もあってか、今回はかなりの高得点が全体的に取れそうな手応えを早くも感じている。
おまけにテスト中に、彼としたエッチなテスト勉強についてもばっちり思い出してしまい、そのおかげで余計に答えは解けたのだけど躰を疼かせないようにと必死に抑えつけたりもした。
「まだ気ぃ抜くんじゃねぇぞ?」
もう安堵している様子の彼女へと笑って言い聞かせた薔はふと、繋いだ手を少し引っ張るようにして立ち止まった。
「ど、どうなさったんですか…?」
まさかテスト期間はまだ終わってもいないのに喜んでしまったのがいけなかったのかと、ナナは慌てだす。
「おまえはここに立ってろ。」
すると、さらりと返した薔は彼女から手を放し、歩いてきたほうへ数歩戻った。
特に彼は怒っているようには見えないのだが、手を放されてしまったしいきなり背を向けられてしまったしで、ナナはさらに慌てた。
そんな不意の慌てようもついでに楽しんでいるのか、少し離れたところで振り向いた薔は悪戯っぽく彼女を見つめると、
「今日が何の日か、憶えてるか?」
試すみたいに問いかけてきた。
(あ――――――――…)
さすがのナナでも、自然と憶い出せていた。
“あの日”と同じように、ふたりのあいだをやわらかな風が吹き通ってゆく。
どれだけの長い時間も、この懐かしさには到底敵わなかった。
「今日は……薔とわたしが出逢って、ちょうど一年目です……」
ナナは彼と恥ずかしそうに視線を絡めて、小さな声でもきちんと返していた。
「よく憶えてたな。」
嬉しそうに微笑んだ薔は彼女へと歩み寄り、再びその手を取る。
一年前の今日、ふたりはこの場所で手を取ることはしなかった、だからこそ手を繋ぐという今では当たり前の行為ですらなんだか特別に思えてくる。
7月は、ふたりが出逢って一年目の記念日と、ふたりが恋人同士になってから一年目の記念日が、同時に訪れる月だった。
「わたしだってそのくらい、ちゃんと覚えてますよ……」
俯き加減に照れて歩きながら、ナナは甘えた声で言い返して、
「テストについては忘れてねぇだろうな?」
彼女の手を引いて歩きながら、薔はどこか意地悪く確かめた。
「あああっ!今日がまだテストだということを、すっかり忘れてました!」
「だから気ぃ抜くなっつったろ。」
「今のは仕方ないじゃないですかーっ!」
ナナは彼との出逢い一周年についてを憶い出した弾みで今日がまだテスト期間であることをしばしのあいだすっかり忘れてしまったようで、薔はただ面白そうに笑っていた。
最終日のテストが待ち受けていると言うのに、このままずっと手を繋いでいたいと、互いに心ではそう思っていた。
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