※※第245話:Make Love(&Invitation).145

















 「もうお勉強やですーっ!」
 辛抱ならずに声を張り上げたナナは、手にしていたシャープペンをノートの上に放った。
 7月にも入り、週明けからはみっちり四日間も期末テストという土曜日、帰宅して昼食後も彼女は言いつけを守りテスト勉強に励んでいた。
 途中適度な休憩を挟みつつやらせてもらっていたものの、とうとう我慢がならなくなった様子だ。

 「……おい、いきなりだだを捏ねんじゃねぇよ…」
 あんまり可愛いことをされるとテスト勉強をそっちのけにさせてしまう危険性があるため、隣に座って彼女の勉強をみていた薔は溜め息をつく。
 ふたりともまだ、制服姿のままだった(勉強に対しての気合いかもしれない)。

 わんこたちはお勉強の邪魔にならないようにと大人しく、寄り添ってお昼寝タイムである。




 たしなめてきた彼のほうを見たナナは、不服そうに申し立てた。

 「もう二時間もお勉強しました……そろそろご褒美ください……」

 と。
 彼女はテスト勉強が嫌で仕方なくなったと言うよりは、彼からのご褒美が欲しくて堪らなくなっていた。
 一度ご褒美をいただけたらまたやる気が出ると思っているが、その場合のやる気はヤる気になること間違いなしだろう。

 「それもそうだな、ちょっと待ってろ。」
 無自覚の誘惑をそら優しい微笑みで回避した薔は、キッチンへと向かった。
 「えええっ!?」
 ナナはびっくり仰天した、食べ物とか飲み物(特に卑猥ではない飲み物)とかが持って来られそうだが、欲しがったご褒美とはそういうご褒美ではない。
 5分間あたまなでなでとかでもじゅうぶんすぎるほどだった。
 5分間あたまをなでなでした後に、平常に戻らなければならないほうの身にも少しはなってみたらどうだろうか。




 「ん、」
 薔がキッチンから持ってきたのは、最近ナナがお気に入りの『濃厚なめらかミルクプリン』だった。
 カラメルソースは入っておらず、白くてとろっとろの蕩けるような甘いプリンです。

 「これじゃやです!」
 ナナは自分が求めているのはこういうご褒美ではないのだと、泣きそうな顔をする。


 「ああ、スプーンが要んな。」
 「えぇぇぇえええええ!?」
 わざとらしくスプーンのことを今思い出したかのように、彼女にプリンを半ば強引に手渡してから薔は再びキッチンに向かった。
 ナナは黙って、プリンの容器に貼られたシールに印刷されているウインクをした牛を眺める。
 見ようによっては、愛嬌がある。

 真似をして、ナナもウインクをしてみた。
 きちんとかたほうだけを瞑ることができた。



 「……何やってんだ?」
 「ぎゃあ!すみません、牛さんのマネです!」
 「ふーん…」
 薔は黙って一部始終を見ていたようで、突然声を掛けられたナナは慌てふためく。
 いかんせん、甘いのに、じれったい。

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