※※第242話:Make Love(&Licking).143
心に咲き、心を裂く、
おかしいくらいにすべてが虜。
「いらっしゃいませ!」
アルバイト初日、コンビニの制服を着た羚亜はめちゃくちゃ張り切っていた。
学校が終わってからの夕方に数日と、土曜日の放課後と日曜日は積極的に働かせてもらえるよう店長に頼んである。
「羚亜くんたら可愛い!いじらしいくらい可愛らしいし健気だし、制服似合ってる!エロ親父とかにさらわれないか心配!」
「愛羅さんてば、心配しすぎだよ……俺これでもヴァンパイアだし……」
彼氏のアルバイト初日を拝みに来ている愛羅は大興奮の様子で、照れた羚亜はこっそりと返しておいた。
万が一でも、羚亜をさらうエロ親父がいたとしたらそれはこの世でただ一人、彼女の愛羅だろう。
「羚亜くんの彼女さんすごい可愛くて美少女じゃん、羚亜くんてああ見えて案外肉食系なのかな……」
プププと笑う店長さんは余計な見当違いの詮索をし、今日は店内がじつに華やかだわあと喜びに満ちていた。
通常なら二人で回す時間帯のところを、羚亜が初日のために三人体制となっている。
レジに入っている元チーフは畏縮し過ぎてもはやカウンターにほとんど隠れてしまっている。
じーっ……
「確かに心配ではあるな……毎日私が迎えに来ようか。」
眼鏡越しの厳しい視線を送っていた醐留権は、いちおう羚亜の保護者的存在ではあるためにいささか心配性になっていた。
愛羅の言った台詞の最後のほうは頷けるからだ。
(どうしようぅ……眼鏡が過保護ぉぉ……)
彼氏なんだけど、こけしちゃんは今そっちのほうにときめき過ぎて羚亜を凝視している醐留権にまったくやきもちを妬いてはいなかった。
キラキラァァの瞳で見つめられたゾーラ先生は、彼女はやきもちを妬いてしまったのではないかと自分にとっては嬉しいほうに解釈して慌ててこけしちゃんを見る。
「ゾーラ先生ぇ、もぉっと羚亜くぅんを心配してていいよぉぉ?」
「そう言われると君のことが心配になってくるのだが!」
こけしちゃんは遠慮なく過保護を貫いて欲しかったのだけど、醐留権先生はそれどころじゃなくなる。
少しくらいはやきもちを妬いて欲しいと思い眼鏡をくいくいさせていると、見つめあっているふたりへそら険しい声が掛けられた。
「おい、俺とナナはここに来る必要があったのか?」
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