※※第239話:Make Love(&Wolf).142















 一度捕らわれたら、逃げられない、

 “牙を剥くのはどっち?”
















 「あら、羚亜くんてナナちゃんと同じ高校だわ、偶然!」
 履歴書を手に、そのコンビニの店長さんは感心したように口にした。
 (そういえばこのコンビニ、三咲さんが以前にアルバイトしてたな……)
 面接中に今さらながら思い出した羚亜は、背筋を震わせた。
 以前にナナが働いていたコンビニに後からアルバイトとして働き始めた場合、自分の身にとんでもない危険が迫ったりはしないかと怯えたからだ。
 しかしながら、羚亜から見た店長さんの印象も良く、店長さんから見た羚亜の印象もなかなか良さそうである、この機会を逃すわけにはいかないと羚亜は萌やしっ子ながら(ついでにヴァンパイアながら)に己を奮い立たせた。

 羚亜がここでアルバイトをしようと決心したのは、もやしの栽培でもイメクラでもなく、コンビニでの接客でした。




 「いいわあ、羚亜くん華奢で可愛いわあ。うちね、なかなか美形が面接に来てくれないから、ほんと助かった!あっ、お客様でいらしてくださる場合は、あるんだけどね、うふふっ。」
 「は、はあ……」
 そら正直に述べた店長さんは顔を緩ませて、羚亜は若干店長さんのイメージが変態のほうへと向いた。
 大丈夫、ダイエットに何度も失敗している旦那がいるから。

 「ちょうどベンくんがバイトの掛け持ち始めたせいで、うちに来ても居酒屋の乗りが残ったまんまで困ってたところでもあるのよ!」
 「……はあ……」
 ベンくんて誰?と思う羚亜は、よくわからない内輪話を始めた店長さんのイメージが若干空気読めない人のほうにも向いた。
 大丈夫、じつはベンジャミン先輩は羚亜も知っている人物だから。

 ちなみに、羚亜はヴァンパイアなために実年齢は二十歳だが、そこは16歳でいってよろしいと醐留権がアドバイスをしてくれた。
 万が一、実年齢をバイト先の誰かに知られても私に多大なる権力があるから何も問題はないと、醐留権は爽やか且つちょっと腹黒い笑顔で太鼓判すら押してくれた。

 「ところで羚亜くんは、三咲 ナナちゃんて知ってる?同じ学年だと思うんだけど。」
 「あ、知ってます。三咲さんの彼氏の薔くんと僕、仲良いです……」
 「やだあ、美形同士が仲良しなんて、少女漫画なの!?これ!」
 「いやこれ……アルバイトの面接ですね……」

 ……禁断エロティックラブコメディな小説ですね、これ。

 果たして薔のほうは仲良しと認定しているのか?については今はまあ別として、羚亜はとりあえず醐留権に教えてもらった通り一人称は僕にしておいた。
 店長さんは一人で勝手に盛り上がっているばかりだ。

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