※※第235話:Make Love(in Movie).140
















 「ゾーラ先生ぇ、」
 彼氏に買ってもらったソフトクリームを美味しく味わっていたこけしちゃんは、ニコニコと口にした。

 「よくよく考えてみたらぁ、ゾーラ先生ぇにはまだぁ、甥っ子いないよねぇぇ?」

 と。




 約束通りの、日曜日デートに、醐留権は予定通り“甥っ子”とやらを連れてきた。
 しかしながらまだ醐留権のお兄ちゃんは変な告白で射止めた彼女と交際をしている真っ只中で、結婚にまでは至っていないのである。

 「すまない、桜葉……“甥になる予定の子”という表現にでもすれば良かったのだが、私としたことがうっかりしてしまった……」
 今頃気づき真剣な表情で彼女と隣り合わせで公園のベンチに座っている醐留権は、同じくソフトクリームを味わいながら申し訳なさげに返した。
 晴れ渡るくらいの青空と言うよりは、淡く蒼い空には雲がゆったりと流れて、日差しも強くなく公園でのデートにはわりと適した陽気だった。




 醐留権先生の甥になる予定の子は、5歳くらいの男の子で、今は無邪気に滑り台を何度も滑ったりして遊んでいる。
 こけしちゃんはますます、甥になる予定の子を連れて来た意味がわからなくなり、ニコニコ中だが押し黙った。
 でもゆくゆくは姪ではなくて甥なので、その点では何となぁくあの子に感謝してもいいと思っている。



 すると醐留権は眼鏡をくいっとやって、どこか気まずそうに敢えて彼を連れてきた説明を始めた。

 「じつは、あの間抜けの代名詞のような兄が奇跡的な交際を続けられている日向さんという女性は、随分な苦労をしてきたようで、未婚ではあるが子持ちだったことが最近になって判明してね、たまに家にも息子の宙(そら)くんを連れて遊びに来るようになったのだが……」







 ニコニコと聞いているこけしちゃんは、その節は偶然にも鉢合わせをしたために知っていた、間抜けの代名詞と弟に呼ばれているお兄さんの告白現場には、ゾーラ先生と薔と羚亜の三人がいたことを。
 実際のところは薔と羚亜は途中から存分に他人事となっていたのだけど、知る由もないこけしちゃんは男だらけのデートという状況に思い出し激萌えをしている。

 そもそも醐留権の今の台詞を聞いていると、家柄がお金持ちということが最大の魅力のようにしか思えてならない。


 それはさて置き、こけしちゃんの心中が腐的にめくるめいていることをまったく察していない醐留権は、やや厳しい雰囲気となり続けた。

 「宙くんには、ちょっとした問題があってね……」

[ 64/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る