※※第214話:Make Love(&Allure).125













 …――――誰にも奪われないはずだった世界を、総て奪うのはただひとり。

 何処にいても、響くから、甘い囁きで突き刺して。














 やってまいりましたは、ハリーと葛篭先生の見張りも兼ねて結婚式場への下見へと繰り出す、日曜日です!
 しっかり午前中から演劇部の活動にも参加して、済ませた昼下がりとなっております。


 「これで変装は、完璧ですかね?」
 とにかく葛篭のほうには生徒だと気づかれないようにと、気合いを入れたナナは彼氏と一緒に変装なるものをしていた。
 デート感覚のふたりは、服装はラフ過ぎずキレイめとなっている。

 「余計に目立ちそうだが……おまえの案だからな、ひとまず採用してやるか。」
 やや呆れたように返した薔は、サングラスとマスクを着用していた。

 「つうかおまえ、可愛さ全然隠しきれてねぇぞ?大丈夫か?」
 「薔だってかっこよさ全然隠しきれてませんよ!あともちろん、可愛さもです!」
 ナナも同じくサングラスとマスクを着用しており、頬の赤みはひとまずマスクで隠れていた。

 どうせなら徹底的に隠すべくお洒落な帽子とかも着用してもらいたいところだが、提案者がナナだから仕方ない。




 朝方お散歩をしてもらえた花子と豆は、寄り添ってすやすやとお昼寝に励んでいる最中で、

 「俺は可愛くねぇだろ。」
 「ばちが当たりますよーっ!?」

 何だかんだでイチャイチャふたりっきりワールド全開となり、ナナと薔は“ハリーさんの白装束でパラドックス大作戦”を見守るべくお出かけして行った。
 サングラスとマスクを着用し、手を繋いでラブラブデート……たまにはこんなのも悪くない、かもしれません。















 ――――――――…

 「うはぁ!」
 式場へと向かう途中、ナナは素晴らしいものを発見した。

 「ザザえもんの形をしたクッションがありますーっ!」





 とあるインテリア雑貨店のショーウィンドウに飾られているのは、等身大っぽいでこぼこのザザえもんクッションだった。
 隣には小さめのピノ太くんクッションも、並んで置かれている。

 「可愛いで」
 すね!と声を掛けようとしたナナは、彼を見てはっ!となった。

 「………………。」
 サングラスとマスクを着用してはいるが、薔の雰囲気はそら険しいことになっている。

 思わずごくりと息を呑んだナナへと向かって、ただならぬオーラを纏う彼はこう言った。

 「後で買ってやる。」




 ……彼女が食いついたので、買ってはくれるようです。







 「いいんですか!?ありがとうございます!あと、あのっ!サングラスとマスクをつけてますと、何だかものすごくもったいないですね!」
 「着けさせたのはおまえだろ?」
 今頃気づいたナナは、マスク越しの悔し声を上げた。
 この物語はただいま6月の初旬ですので、暑いからそろそろふたりとも外したくなっている。



 「………………?」
 やはり街中でサングラスとマスクを着用してイチャついているカップルは、目立っていた。

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