※※第210話:Make Love(&Knavery).122













 「えええええ!?結婚!?」
 ナナは驚きのあまり、声を張り上げた。
 もうすぐ授業は始まろうとしているが、親友が何か言いたそうにしていたために席に着けずにいたらいきなり、こっそりと結婚の話について打ち明けられたのだ。
 “結婚”というめでたい単語の登場に、周りは何事かとそちらを見る。


 「そうそうぅ、結婚と言えばぁ、それすなわち養子縁組でもあってぇぇ…」
 「ほ、ほおお…?」
 ニコニコとこけしちゃんは、あたかも自分の専門分野を語っていたかのような流れに持っていかせてから、

 「ナナちゃぁん、くれぐれもぉぉ、こぉっそりよろしくねぇぇ…?」
 「ご、ごめんね……こけしちゃん……びっくりしちゃったから、つい……」

 こそこそと親友をたしなめた。
 ナナは素直にこそこそと謝る。

 火曜日にさっそく、こけしちゃんは月曜日の醐留権邸での出来事をナナに報告していた。
 うまくいけば騒動に巻き込んで頼もしい味方になるかもぉぉ……とか思っていたのは内緒である。
 ちなみにこけしちゃんは、加茄太郎おじいちゃんに何が何でも泊まってゆくように引き留められそうになっていたのだが、こけしちゃん宅から醐留権邸へと意味不明な(まるで猫が唸っているような)電話がかかってきたために何事かと言うことで無事に家には帰らせてもらえたらしい。
 帰宅してみても特に何も起こってはおらず、こけしちゃん一家はいつものように平穏に過ごせたようです。



 「今日もねぇ、ゾーラ先生ぇのお家に行くことになってるんだけどぉぉ、正直ちょぉっとめんどくさくてぇぇ……」
 「な、なるほど……確かに、醐留権先生はめんどくさくないけど、醐留権先生のおじいちゃんは……すごくめんどくさいもんね……」
 こけしちゃんのニコニコとした憂い顔に、共感するナナは申し訳ないとは思ったが率直に返してみた。
 じつに、こそこそと。

 今日の放課後も、ばっちり約束はしてあるのだけどゾーラ先生に連れ去られるとなると、こけしちゃんは何だかとても面倒くさい気しかしていない。
 しかしながら加茄太郎おじいちゃんが人質(物質か?)に取っている羚亜のセーラー服姿の写真は、見せてほしくて、そしてあわよくば送ってほしくて仕方ない。

 「何かあった場合はぁ、ナナちゃぁん、よろしくねぇぇ…?」
 「もちろんだよ……こけしちゃん……!」
 こけしちゃんは親友(とその彼氏)を巻き込む気満々で、ナナはまんまと熱く乗せられたのだった。

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