※※第209話:Make Love(&Intersect).121
…――過去は絡みあい、闇の色を浮かべる。
けれどふたりは見つめあいながら、同じ未来を見ている。
例え、それが、どんな色であっても。
「はぁぁぁ……」
大学ノートへ視線を落とし、遊ばせるようにシャープペンシルをゆびで揺らしながらこけしちゃんは、本日何度目かの溜め息をついた。
「……こけしちゃん、どうしたの?」
親友が何か深く悩んでいる様子なので、予鈴は鳴っているのだけどナナはまだ席に着けずにいる。
未だ白いままのノートにはちゃっかり、期待を寄せてはいる。
こけしちゃんは今日の放課後ゾーラ先生に連れ去られる予定ですが、ナナは無論そんなことは知りません。
16歳の乙女の溜め息の要因は、てっきり彼氏に連れ去られることかと思いきや。
ふと顔を上げたこけしちゃんは、どこかしら憂いを含んだニコニコ顔でおっとりと口にした。
ナナは思わず息を呑む。
「あのねぇ、ナナちゃぁん、ゾーラ先生ぇが薔くぅんを連れ去るならぁぁ、いずれは監禁させたほうがいいか悩んでるのぉぉ……」
…――――やっぱり脳内ではそうなっていたのか(さすがはこけし姉さん)!
「えええ!?醐留権先生はわたしの薔を、連れ去っちゃうの!?」
びっくり仰天のナナさんはさりげなくもなく、“わたしの”を付属させていた。
同じクラスの隊員たちは、隊長の悩みについて脳内で一緒になって悩み始める。
「ナナちゃぁんはぁ、どうなっちゃったほうがぁ、いいと思うぅぅ?」
「えっと……えぇえ?眼鏡をぶち割るとかでなければ、大丈夫かと……」
こけしちゃんの切羽詰まった質問に、ナナはとりあえずホラーでなければ良いという旨を伝えた。
くどいようですが、すでに予鈴は鳴っております。
「でもぉ、必死になって抵抗する際にはぁ、割れる可能性がぁぁ……」
「ひぇぇぇぇえええ…!怖い…!」
切なげな親友の返しに、正しい流れについてを理解しているナナは青ざめた。
もはや乙女たちの会話は成立しているのか成立していないんだかがよくわからない。
クラスメートたちは、ちゃっかり付属された“わたしの”やなんかに、面映ゆい心持ちでいる。
ここで改めてご説明をさせていただきますが、本日の放課後ゾーラ先生に連れ去られるのは、
彼女のこけしちゃんでございます。
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