※※第196話:Make Love(&Fixate).114
…――――ほつほつと、紡がれた糸たちは解れてゆくのか。
歯車は狂ってしまえば巻き戻すことも、繕うこともできないように創られているのだろうか。
以前、男は言った。
“高く積み上げれば積み上げるほど、壊れるときが美しい”――――――…
「命の恩人と、邪魔な存在が被っちゃっただけのお話、」
ゆびさきで男は、花びらをちぎる、雨すら届かない筒闇の夜へと。
一枚一枚、丁寧に、根元から。
「お伽噺のような、真実だ…」
ちぎられた花びらは、力なく暗い風に舞ってゆく。
「俺はとっても大事なヒントを与えてあげたよ?」
竜紀は真っ白な薔薇の花びらたちを、夜陰に乗せて、ただ笑っていた。
「だからゆっくり、ここまでおいで…」
真実とは、必ずしも美しいものとは限らないだろう。
暗闇でじっと、ほんの些細な部分を躓かせてしまおうと息を潜めている場合だっていくらでもある。
やがて男は、蒼白の花びらが乗ってゆくその先へと目をやり、
「一番邪魔な存在は、もちろん“あのひと”なんだけど、危害は加えられないんだよね……残念。あの時、殺していたら危うく俺は消えてなくなるところだった、」
不気味なほど楽しげに笑うと、さいごの一枚をちぎったのだった。
「本当に稀なケースなのにね――F・B・Dが遺伝するのは。」
…――――ゆっくり壊れて二度ともとには、
戻らなくなっちゃえばいいんだよ。
…――Mystery calls mystery.
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