※※第194話:Make Love(&Thickness).113








 「わたしは薔とおんなじのがいいです!」
 彼と繋いだ手をちょっとぶんぶんと振って、ナナははしゃいでいた。
 「俺もおまえとおんなじのがいいな?」
 彼女と繋いだ手をちょっとつよく握り返して、薔は微笑んだ。

 「でもわたし、できれば思いっきり甘いのが欲しいんですが、それでもいいんですか?」
 「おまえと一緒なら俺は何でもいいよ。」
 「わああ、嬉しいです!」
 ふたりはまさにふたりっきりの世界で、近所のコンビニに足を運んでいた。
 ナナが欲しがっている“思いっきり甘いの”と言うのは、食後のデザートのことである。

 「でも、全部美味しそうで困っちゃいますね…」
 と、豊富に品揃えされ冷たい棚に並んだスイーツを吟味しながら、ナナは彼に声をかけ、
 「あぁ、そうだな、」
 吟味している彼女を見ながら、薔は返す。
 互いに対象は違っていながらも、通じてはおります。




 ガクガクブルブルと震撼するベンジャミンは、今日は言い付けられてはいないがふたりの視界には入らないように細心の注意を払いながら夕食のお弁当を吟味しようとしていた。
 朝からアルバイトに励み、上がった頃にナナと薔はお買い物にやってきたのだ。

 畏縮に畏縮するベンジャミンではあるが、本日は初の活躍を見せたこともあり大目に見てあげてほしいところでもある。




 「あの…、ちょっと通らせていただいてもよろしいでしょうか…?」
 他の通路から遠回りする考えはベンジャミンの中にはなかったらしく、ふたりの後ろを通らせてもらおうと控えめに声を掛けた。
 ちなみに、ベンジャミンですらも通れるスペースはじゅうぶんすぎるほどに確保されており、あくまでこの質問はお許しを得るためのものであった。


 すると、あまりにも意外にもか、これぞ活躍の賜物か、

 「ん、」

 薔は繋いだ手を引っ張ってナナを自分にくっつけるようにして守り、後ろを通らせてくれる模様なのである。
 ベンジャミンにとってはまさにVIP待遇よ。



 「………………!」
 大感激したベンジャミンは買い物カゴを落っことした。
 すでに中に入っていたカップ麺が五つほど床に転がる。

 「あっ!これがいいかもしれないです!」
 「俺もそう思ってた、」
 大感激しているベンジャミンにはお構いなしに、ナナと薔はスイーツを一緒に吟味している。



 ところが、感激のあまりにベンジャミンは、

 「どっ、どうしたの?オドレイ……薔さまがなんか、優しいよ……?」

 ナナの肩に触れようとしてしまったのだ。

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