※※第193話:Make Love(in Clubroom).112













 日曜日の朝、スタジオへと出発する前に屡薇は愛の巣を訪問していた。
 もちろん、豆を花子に預けに寄ったこともあるが、屡薇の目的はそれだけではありませんでした。

 「そういえば薔ちゃんさ、嫁さんはPVに出てもいいの?」
 屡薇はリビングより、キッチンにて仲良く朝食を食べている夫婦(ではまだないけどこの際夫婦でいいか)へと尋ねてみた。
 ちなみに屡薇は、今朝は照れまくって仏頂面の真依に朝食を用意してもらえたので、ここでは戴く必要がないのである。


 「ダメに決まってんだろ。」
 即答した薔は手を休めたちまち不機嫌となり、リビングからキッチンを覗いている屡薇へと厳しい視線を送った。
 くれぐれも、PVも断られないように気をつけてほしいんだけど……

 「俺の可愛いこいつが狙われでもしたらどうすんだよ、危ねぇだろ?ナナは誰よりも可愛くておまけに魔性みてぇな色気あんだぞ?本人は自覚してねぇとこがまた可愛いからたち悪りぃしな、そもそもナナの全部は俺のもんだからダメだ。」
 「ぶぉはあああ!」
 たいそう不機嫌なままきっぱりとつづけられた彼の言葉に、真っ赤っかとなったナナは危うくお茶を吹き出すところだった。
 ごはんを食べる花子に、豆は構ってもらいたいらしくじゃれついている。


 「わああ、すごいノロケきたこれ…」
 屡薇はお腹いっぱいなところを、さらにお腹いっぱいになりそうな勢いだ。

 しかしながら、それだとヴァンパイアっぽいPVにはなりそうにないため、屡薇は食い下がった。

 「顔出しはしないって約束してもダメ?嫁さんがダメってことになると薔ちゃんが、嫁さん以外の女性を噛むか、いっそ俺らが相手になるかしてBLテイストにするか、になっちまうんだけど(それだと真依さんが色々危ねぇかも)……」






 「それはダメです!」
 今度はガチャンとご飯茶碗とお箸を置いて立ち上がったナナが断固として拒否をした。
 いつもはこけしちゃん作品でぶるぶるしてても、やはり後者(BLテイスト)でもダメなようだ。

 「薔が噛んでいいのはわたしだけなので、絶対にダメです!わたしが出ます!」








 「おまえ…可愛いこと言うんじゃねぇよ、もう一回言ってみろ。」
 「言ってはいけないんですか!?言わなきゃいけないんですか!?どこの部分ですか!?」
 「俺が咬んでいいのはおまえだけって部分なら何度でも言っていい。」
 「恥ずかしいですよ!」
 とたんにふたりはふたりっきりワールド全開である。

 「あのさぁ、俺まだここにいるんだけど…」
 存在を忘れられている感が否めない屡薇は、マイペースに訴えかけている。

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