※※第187話:Make Love(&Ride).109












 『自制を解け、欲情に怠惰は必要ない』














 時刻は月曜日、みどりの日の明け方。
 まだ太陽の目覚ましも鳴らない頃。

 「……おい、」
 マンションの前にて、寝起きのせいではない不機嫌さで薔は言いました。

 「何でこいつらがいんだ?」








 「えっとですね……こけしちゃんが、アイロン掛けが得意だと言うので…今日ははるばる……眠い……」
 まだ寝ぼけ眼のナナは、非常に眠たそうに返す。
 彼と手を繋いでいなければ今にも眠りに落ちてしまいそうな勢いだ。

 この日、エクストリームアイロニングの旅に、早起きしてわりと近場へ出発しようとしていた2カップルと仲良しわんこを、さらなる2カップルが待ち伏せしていたのである。





 「運転は任せてくれたまえ。車はちゃんとワゴンをレンタルしてきたよ?」
 立派なワゴン車をレンタルしてくれた醐留権は、明け方にもそら爽やかに眼鏡を光らせ微笑んだ。

 「誰も頼んでねぇよ。」
 「暮中、そんな口を聞いていいのかい?私は君の担任だぞ?」
 「今は関係ねぇだろ。」
 夜が明けないうちから、ふたりの美形キャラはいささか揉めております。

 「あぁぁ……担任以上の関係のくせにぃぃぃ……」
 たいそううっとりのこけしちゃんは楽園を前に、スケッチブックを持ってくるべきだったぁぁ……とおっとりと後悔。

 「羚亜くん、眠いね……」
 「うん、でも楽しみだね……」
 バカップルは寄り添って、ふたりして未だウトウトしている。




 「私の母が無茶を言ったばかりに、本当にごめんなさい…」
 葛篭は申し訳なさそうに、深々とあたまを下げ、

 「OHH〜……面目ソーリー……」

 つられてハリーも深々とあたまを下げた。
 でもちょっとこんなのも、せっかくの婚前ゴールデンウィークなんだからいいかなと思っている。

 花子と豆は終始、尻尾を振っている。





 「おい、ここで寝んな。」
 「だってまだ眠いです……」

 とうとうナナさんは、彼にもたれた状態で夢見心地となり、

 「ゴールデンウィークはどこも混むからね、早めに出発しようか。」

 ゾーラ先生が促し、アイロン掛け用具一式を載せると、一同は出発となりました!







 「ところでどこに行くんだ?」
 「それは着いてのお楽しみさ。」
 もったいぶった醐留権は車を発進させ、もったいぶられた薔の機嫌はさらに悪くなる。

 (こんな時間からぁ、仲良すぎぃぃぃ……)
 こけしちゃんはばっちり、心のスケッチブックへ萌えという名のペンを走らせていた。

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