※※第129話:Make Love(&Love potion).69











 ドンドンッ

 「頼もう〜、」


 時刻は19時を回ったところ。
 ナナと薔と花子の愛の巣には、お隣さんがやってきたようだ。
 時は既に週末でございます。





 ガチャ――――――…

 不機嫌極まりない薔が、玄関のドアを開けますと、

 「あっ、薔ちゃん、あのさ、醤油貸してくんね?」

 なぜか刺身のパックを手にした、屡薇が立っておった。



 「…そんくれえ常備しとけよ、」
 「だって俺、料理とか何もできねぇし、いつも買ってくるやつにはちゃんと醤油ついてんだよ。」
 呆れ返る薔のまえ、屡薇はあっけらかんと返し、

 「でさぁ、ここで掛けてきゃいいと思ってさぁ、そうすりゃ二度手間省けんじゃん?」
 「だったらせめて何か被せて来い。」

 珍しいカップリングだが(実際にはカップリングじゃないけど)、ふたりの美形男子が玄関でいささか揉めております。



 そのとき、

 「それよりお前、玄関でやたら騒ぐんじゃねぇよ、通報されてぇのか?」

 と、止まる処を知らない不機嫌さで、薔が諭してきたのだ。


 すると、

 「だってこないだお宅の嫁さん、そうやって俺のボロアパート訪ねて来たし、」

 屡薇はここで魔法の言葉、“お宅の嫁さん”を登場させてみた!





 「ふーん、」
 まったく悪い気がしなかった薔は、

 「ちょっと待ってろ。」

 奥へ向かおうとした。




 (か〜わいい〜。)

 屡薇はこけしちゃんが聞いたらたいそう悦ぶであろうなことを、こころで呟く。


 しかし、

 モグモグ

 薔の背後には、お皿に盛り付けた肉じゃがを頬張るお宅の嫁さんことナナが立っていて、

 「ふぉへっ、ほぃひいへふっ!」

 旦那こと薔の料理を、“これ、美味しいです!”と大絶賛した。






 「おまえ、」
 薔は途端に、不機嫌というかそら険しくなり、

 「何で先に食ってんだよ、」
 「だって美味しそうだったんですもん!味見ですよ、味見!」
 「味見にしちゃ量が多いだろ、」
 「そうですかね?」

 最終的に、イチャつき始めた。





 (…………醤油は?)

 ラップも何もされていない刺身のパックを片手に、屡薇は立ち尽くす。


 そこへ、

 タタタタタ…

 醤油をボトルさら咥えた、花子がやって来た。



 花子はお利口さんに、ボトルを差し出してきますので、

 「ありがとう、君天使だね。」
 笑いながら屡薇が、醤油を手にした直後、

 バタン――――――…

 ドアは閉められた。花子の前脚によって。





 「…結局俺、二度手間かよ、」
 ぽつりと呟いた屡薇はすぐ隣の部屋へと、戻っていったんだとさ。

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