餌食にされた金曜日






 仕事から帰ってくると、マンションの部屋の前に一匹の猫がいた。とても艶やかな毛並みの、黒猫だった。
 ペット可のマンションなので、どこかの部屋から逃げ出したのかもしれない。セキュリティの面から言っても野良猫が迷い込むのは考えにくい。
 もしかしたら今頃、飼い主が必死になって探しているかもしれない。管理会社に知らせるのが得策だろう。
 でも疲れているし管理会社にわざわざ電話をするのも面倒だな……と思っていると、猫は私を見るなり足にすり寄ってきた。

 飼い猫はやっぱり人慣れしている、警戒心を全く感じられない。しかも甘えてくる様子がやけに可愛くて、癒されて胸がときめく。

 やはり管理会社に電話をして知らせてあげないとこの子が可哀想だと思い、私は急いで玄関の鍵を外しドアを開けた。
 共同スペースでの電話はマナー違反だと考えた上での、とっさの行動だった。
 それに、猫を一時的に保護をするつもりでもあった。
 マンションの廊下は明かりが灯っていたが、部屋の中はまだ真っ暗だった。


「お招きいただきありがとうございます」
 射し込む明かりを頼りに玄関灯のスイッチに手を伸ばした私のすぐ後ろで、突然男性の声がした。
「えっ……!?」
 びっくりした私が明かりを点けると同時に、玄関のドアが閉まった。
 私が閉めたのではなく、突然現れたイケメン(シンプルに表現するとイケメンだった)が後ろ手にドアを閉めたのだ。

「ええっ!? あの、どなたですか!? 警察呼びますよ!」
 スマホは管理会社よりまず先に、110番をするために構えられる。
 猫をほっぽり出してしまったのも気がかりだが、無差別殺人とかなら自分の命が危ない。
 イケメンなら何をしても許される世の中というのは、別の次元に存在している。


「ああ、思った通りだ。見上げたときから確信してましたけど、お姉さん、胸の形すっごく綺麗ですね」
 忠告を全く聞いていない様子のイケメンは、うっとりと私の胸を見つめた。
「いつ見上げたんですか!? あなた、痴漢ですか!?」
 とにかく早く警察を呼ぼうとしていた私は、両手で胸を掴まれた。服ごと掴んで、いきなり揉まれだす。

「ちょっと! やめてください!」
 制止にかかった私の手を振り払い、男の子は胸を揉み揉みする。
 これは痴漢ではなくいわゆる強姦だと確信したとき、服越しに乳首をコリコリされた。
「ん……あっ」
 強姦だと確信したばかりなのに、乳首が甘く痺れて私は予想外の声を上げた。
 明らかに感じている声だった。
「もともと、おっぱい弱いんですか?」
 男の子は面白そうに笑いながら、シャツのボタンを外してゆく。
「だったらごめんなさい。僕が触るともっと敏感になっちゃいます」
 今度はブラジャーごと胸を掴み、大胆に揉みしだく。
「うっ…んっ? あっ……」
 頭がぼーっとしてきた私はわけがわからなくなり、バッグもスマホも玄関に落としてしまった。
 彼が触ると敏感になるって、どういうことだろう……とかはうっすらと考えられるのだけど、とにかく胸が気持ちいい。

 ブラジャーはゆっくりとずらされ、乳房はあらわになった。

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