第九話:光放つ失望









 「ん…っ、あ…っ」
 鉄太に全て知られていたこと、結局彼とは別れられなかったこと、それらの事実を何一つ話せないまま梨由は兄に抱かれていた。



 「今日は躰が強張ってるな、何かあった?」
 脱がせた肌にキスをしてゆく武瑠は、穏やかな声で問いかける。
 恐ろしいくらいに愛撫は優しくて、梨由は兄に何もかも見透かされているような気分になる。
 「な…っ、何もっ…ないよ…っ、……っんっっ」
 パンツのうえからなめらかにラビアを擦られ、妹は腰をびくんと跳ねさせる。

 きちんと彼氏と別れたのか、厳しく問い詰められたとしてもまったくおかしくない今夜。
 武瑠はその話についてはいっさい触れないまま、先に帰っていた梨由をすぐにセックスへ誘った。
 何も聞かない兄に対して不安を抱いていた、だから躰は強張ってしまう、それはよくわかっているから心はびくびくしてとにかく激しくしてほしかった。
 頭の中が真っ白になれば、不安を感じる余裕もなくなる。

 「何もないって感じじゃねえだろ」
 ふっと胸からくちびるを離した武瑠は、妹の脚を開かせ、下着越しにクリトリスへ一度吸いついた。

 「お兄ちゃんに隠し事してるだろ?梨由」
 ジュッ……という愛液の音がして、わざとらしく自分のことを彼はお兄ちゃんと呼ぶ。
 お兄ちゃんではなくなったはずだ、当たり前のその呼び方はとても異常に思えた。
 じりじりと追い詰められる梨由はクリトリスの気持ちよさで一気に全身のちからが抜けて、不安もだんだんと解けてくる。
 このまま、本当のことを明かしてしまってもいいのではないかという考えが、ぼんやりとした脳内に忽然と浮かび上がる。

 「……て…っ、鉄太に…っ、全部っ……バレてた…っ、あ…っんっ」
 なので、正直に言ってしまった。
 そのあいだ兄はずっと、指と口で秘部をやわらかく弄くり回していた。

 「相手が…っ、お兄ちゃんっ……だから…っ、別れないって言われた…っっ!」
 感じてふるえる梨由はしきりに腰を跳ねさせて、上擦った声を振り絞る。
 鉄太のことを話していても、考えているのは兄のことだけ、支配されているのは兄にだけ。
 えもいわれぬ快感と共に僅かな罪悪感が這い上がり、そのことでも兄は妹を虜にさせる、何度でも。

 「あいつが俺たちの関係に気づいてるのは、知ってたけど」
 あっさりと返した武瑠はクリトリスを親指で弾いたあと、ゆびで無理矢理に膣口を拡げた。
 「あ…あっ、ダメ…っ、……そ…れっ」
 ヌグヌグと拡げられた入り口から切ない痛みが奥へ突き上がり、梨由は宙でつまさきをふるわせた。
 今夜は部屋に、煌々と照明が灯されている、よく見えてしまうのが堪らない羞恥になる。



 「案外図太いな……面白くなってきた」
 妖しく微笑んだ武瑠はヴァギナにゆびを入れて、打って変わって素早く動かし始めた。

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