第七話:無二の累卵
くちびるの感触やあたたかい吐息が、目隠しをされているからかより鮮明に躰を愛撫した。
ゆびは尚も膣の浅くを擦り、焦らす、すると梨由の息づかいはどんどん荒くなる。
親指を使って、不意討ちでクリトリスを弾かれれば腰は大きく跳ねて、襲い来るじりじりとした快感をヴァギナは必死で手繰り寄せる。
ヌチッ…グチュッ――…
蜜は卑猥な音となり、閉ざされていない聴覚を絶え間なく刺激した。
肌を滑るエロティックなリップ音も、同様に。
「はっ…あっ、うっんん…っあっあっ、あ…っ」
達してしまいたいのに、できない、与える兄がわざとそれを阻んでいるからだ。
「梨由って、焦らされんのが大好きだったんだ?嬉しい発見だな」
今夜はやけに妹を焦れさせている武瑠は、くすくすと笑ってゆびを巧みに動かした。
「お兄ちゃんのことが大好きで、お兄ちゃんだけに厭らしくなる妹を持って……ほんと、俺は幸せだよ」
ひどく愉しげな笑い声に、梨由はぞくぞくしてしまう、早く素直にせがみたい気持ちともっと苛めてほしい気持ちが甘ったるい嬌声となり高く響いていった。
要するに、兄になら何をされても構わなかった。
ただ、“彼氏”を“枷”で片付けられたときには軽薄な感情しか抱きはしなかったが、武瑠への想いを“大好き”だけで表現されたのには深く意義を申し立てたい気分になった。
大好きであることには間違いなくとも、一度では足りないほどに大好きで、自分からも言葉で伝えたくなる。
でも結局は何度言葉にしたところで足りない、兄がその気持ちをわかっていてくれるのならそれが全てなのかもしれない。
「あ…あっ、ああっ…あ…あっ」
暗闇を生み出すネクタイが、汗や涙で湿っている。
またクリトリスをグチュグチュと弄くられて梨由は感じてしまう、腰は自然と跳ねて止まらなかった。
「あーあ、おまえもう、布団ぐしょぐしょになっちまったぞ?どうすんだよ、これ一枚しか持ってねえのに」
愛液を溢れさしているのは妹でも、濡らしてゆくのは兄だ、それなのに武瑠は呆れたように言葉にすると秘部を弄んでいたゆびも柔肌に這わせていたくちびるも離してしまった。
「いっ…や…っ!あ…っ」
もっと触れていてほしくて、梨由はつまさきをじれったく伸ばす。
実際にはつまさきより兄のほうが確実に、触れてほしい場所の近くにいたのだけど。
「いっそ、帰ってくるか?」
次の瞬間、思いもよらなかった言葉が優しく吹き掛けられた。
「え……っ?」
脚をゆっくりと撫でられた梨由は耳を疑う。
鉄太との別れを突きつけられたときとは、比べものにならない驚きで鼓動が高鳴る。
「それとも……ふたりで遠くへ逃げて、誰も俺たちを知らない場所で一緒に暮らすか?」
その鼓動を一気に奪い去る囁きのあと、焦らされていたラビアには兄の舌が滑っていった。
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