第二話:密めく熱帯夜
一人、残されると、微睡みにも似た熱がやってくる。
濡れた躰が、全て夢ではないのだと物語っているようで。
「はぁ……」
眠いのか、目眩を感じているのか、わからない梨由は自身のくちびるへと触れてみた。
「おにい…ちゃん…」
…――逃げられはしないのだと、思っても、いいの――…?
武瑠が愛撫した部分へと、そっと梨由は手を伸ばす。
「ん…っ、お兄ちゃん……もっと…」
下から、クチュッ…と濡れた音が聞こえる。
乳首は未だ硬くなっている。
「あ…っ、あ、…お兄ちゃ…っ」
そして梨由はひとりで、兄との続きを始めた。
湿ったシーツを、つまさきがくしゃっと波打たせ。
「は…っ、あ…っぁ、ん…っ」
梨由の吐息や声は、控えめに部屋へと響く。
お兄ちゃん……
あたし、あのままイかせてほしかったよ……
そう、強く描いた。
「あ…っ、そこ…っ」
無性に、虚しくなる。
さっきまではあんなにも、満たされていたというのに。
誰よりも大事にしたいと言った、兄のあの言葉は本心なのだろうか?
もしかしたら自分に女としての魅力がなかっただけかもしれないと、考えだすと止まらなくて不安になってくる。
「……っん、あっ」
それをかき消すかのごとく、自らを弄る。
気づくと夜明けは、間近となって、
「…――――――っっ!」
梨由は達した。
ヌルッとした愛液が、ゆびへと纏わりつく。
「はぁっ、はぁっ」
汗だくでぐったりと、乱れた布団へ倒れ込むと、
「お兄ちゃんなんて…」
震えるくちびるを梨由は微かに開いたのだった。
大嫌い…に、なりたかったけど……
近づけた感覚と、遠ざかる感覚。
どちらも拭えず、しばしの眠りにもまだ就けなくて、梨由は早くもこの“お遊び”をなかったことにできたらと思っていた。
[ 19/96 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧へ戻る]
[しおりを挟む]
戻る