I'm sick,because love you.(fir)







 「…………は?」

 慧は既に、冷や汗をかいている。

 「って言ったら、堕ちてくれるんでしょ?俺に堕ちてよ、慧。」

 柚衣はずっと、笑いながら続ける。




 「悪ふざけもいい加減にしろよ!それは女の子の場合で、」
 掴まれた両手を解こうと、慧は必死。

 しかし、柚衣の手は、びくともしない。




 すると、

 「悪ふざけは、今までのだよ?」

 ふっと、柚衣は告げました。

 「慧だけは、本気。」










 その直後、

 チュ――――――…

 柚衣は慧のくちびるを、半ば無理矢理奪った。


 「ん……っ!」
 抵抗は試みるだけで、くちびるをこじ開け舌が滑り込んでくる。


 (い…、息…が…っ、)
 眩暈を覚え、立っていることすらままならなかった慧は、


 …―――ガリッ、


 咄嗟に、柚衣のくちびるを力任せに噛んでいた。







 「んはぁ…っ、」
 ようやく、くちびるが離されると、

 ツ―――…

 柚衣のくちびるからは、一筋の赤い血が伝い落ちてゆく。



 「あっ、ごめ…っ、」
 慌てふためいた慧は、思わず謝っていたのだけど、



 柚衣は、くちびるの血を拭いながら、

 フッ―――…


 「慧は、ちょっと過激なキスが好きなんだね。」


 と、笑った。







 ゾク…

 冷たい針みたいなものが背筋を走り抜け、


 ガチャ――――――…!


 無我夢中で門を開けた慧は、叩きつけるように閉めてから、一目散に家へと飛び込んだ。







 「可愛いなぁ、慧は。あんな嬉しそうに照れてくれるなら、もっと早く俺のものにしとけば良かった。」

 血に染まったくちびるで、柚衣は笑いながら呟いた。

















 ドクドクドクドク…

 (な、なんだこれ…!?)

 玄関の上がり口に座り込み、慧は苦しげに左胸を押さえていた。
 まだ誰も帰っていない家の中は、しんと静まり返って自分の心音しか聞こえない。



 (なに?あいつ、誰なんだ?俺の知ってる柚衣は、どっかへ行っちゃったのか?)

 はやく、この鼓動を、鎮めないと……















 口から飛び出そうな心臓が、おかしな速さで脈打ってる。

 そのまま床へと転げ落ちて、二度と動かなくなるみたいに。










 I'm sick,because love you.



 (※後半へと痛々しく続く。)

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