ベイベー、愛してるかも









 …――そううまくは、いかないもの、かも。





 「なぁ、」
 只今、朝の、登校時間です。

 「なに?勇斗(はやと)、」
 にっこり返した幼なじみに、勇斗は言いました。

 「なんでお前、彼女できたのに、毎日俺んとこ迎えにくんの?」





 「え〜、いいじゃん、」
 「よくねぇよ、このリア充が、」

 幼なじみくんは、隣に彼女さんを連れていた。



 「友也(ゆうや)くんは、勇斗くんと行きたいみたいよ、」
 呆れたみたいに笑って、友也の彼女が答える。

 「それじゃ駄目だろ。」
 「えーっ、」

 勇斗も呆れ、友也だけが腑に落ちない感じだ。





 …――幼なじみの友也は、昔からちょっと、俺に依存しているみたいなとこがある。











 ――――――――…

 (せっかく彼女ができて、俺離れ出来ると思ったんだけどなぁ…)
 休み時間、溜め息混じりに頬杖をつく勇斗へ、

 「おーい、勇斗ぉ!」
 同じ部活であるため、けっこう仲の良い隣のクラスの男の子が、廊下から大声を掛けてきた。


 「なに?」
 立ち上がり、歩いていった勇斗を、

 「………………。」

 席に着いたまんま、後ろから友也が見送っていた。





 「お前さぁ、毎日友也と登下校してるらしいじゃん、」
 「ん、まぁな、」
 気のない返事を勇斗がすると、

 がしっ!

 隣のクラスのその子は、いきなり肩を組み耳打ちしてきたのだ。

 「いい加減、友也から離れてやれよ。星川(ほしかわ)が、あいつとふたりっきりで帰りたいって、愚痴ってんだよ。」

 と。



 星川とは、友也の彼女さんの名字であった。




 ムカ

 とした勇斗であるが、

 「そんくらい、俺だって、わかってるよ。」

 と返した。



 「なら良かった、よろしくな!星川のやつ、おれにばっか愚痴るから嫌になってたんだよ、」
 ホッと安心したように、その男の子は肩から手を離した。





 「…………っ、」
 ずっと見ていた友也は一瞬、今にも泣きそうな表情をしたのだけど。


 「うぜえ、」
 ぽつりと呟き、勇斗は席に戻った。

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