※※第84話:Make Love(+Vampirism).31










 格安な、ラーメン店におりました。


 「なんだか懐かしいです!」
 「食ったことあんのか?」
 「はいっ!」

 並んで、おしながきを見るナナと、そんな彼女を見ている薔を見ながら、

 (役得が、どえらいことに…)

 演劇部の皆さんは、いったんほっぺたをつねりたい衝動に駆られております。



 「あはははははあ!」
 「部長っ!うるさい!他のお客さんに迷惑だから、静かにしないと放り出すよ!?」
 「あはっ…ええ!?」

 ようやく掴めてまいりましたが、和湖部長の攻略法は、“心を鬼にすること”のようです。




 (えーと、一番安いラーメンが、これだから、人数分でかけると…、いくらになるんだろ?)

 ぼく化学の先生だから、そうそうには叩き出せないよーっ!(泣)


 理数系という言葉を知らないのか、横科先生はとにかくヒヤヒヤしており、一番安いラーメンに皆さん落ち着いてほしいのです。



 「あっ!わたし、この、とんこつラーメンがいいです!」
 「それ、一番高いランクだよーっ!?」
 「あ?」

 …………ひぇえ!




 とんこつを阻止しようと試みた横科だったが、有無を言わせぬ視線により青ざめ、

 「あたしもとんこつがいいな〜。」
 「おれも、」

 皆さんはヒロインに、影響され始めた。


 (ちょっとーっ!)
 更に青ざめる、横科。


 そのときだった。

 「俺は一番安いやつでいい。」

 と、言い切ったのです、薔が。




 えぇえ―――――――――――――っ!?
 意外ーっ!


 周りは心底、びっくり仰天した。



 「え?こちらでいいんですか?」
 ナナが目をぱちくりさせ、確かめると、
 「他のはしつこすぎて、食えねーんだよ。」
 と、薔は明かしました。



 「確かに、これが一番さっぱりしてるかも…」
 「あたしダイエット中だったよ…」
 周り(特に乙女たち)は、次々とヒーローに感化されていった。


 「わたしもこれが良くなっちゃいました!」
 「そうか、」
 否応なしに、ナナまで感化されたため、

 「薔さま…、ぼく、一生ついてゆきます…」

 横科は感涙にむせた。
 一生ついていこうものなら、まず、定年退職することなく通報されますが。

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