第70話:Love(&Redeemer!).45







 「………ハッ!」
 突然、目を覚ましたハリーが、呟いた。

 「霊気が、消滅しました…」







 「おや?」
 「んぅ?」
 そして醐留権とこけしちゃんは、窓の外を見下ろし、

 「なるほど、そういうことか。」
 「なるほどぉ、そぉぉいうことぉ。」

 同時に呟いたのだけど、言い終えるタイミングはちょっとずれた。


 「ワンッ!」
 花子は大喜びで、尻尾を振っております。












 「あぁあ、もう、けっこうお久しぶりに、辞書が登場しましたね!」
 「おまえはこの状況で、なに言ってんだ?」
 この状況下でなにその発言?は今に始まったことでは到底ないのだが、ナナと薔がこんなやりとりを交わした直後のことであった。









 カチ…

 「薔さまぁあああ――――――――――――っっ!!!!」

 おそらく懐中電灯やなんかの光であるが、が一斉に灯って、外から何百人という学校メンバーの声が場をつんざいたのである。



 「あ?」
 「おおおっ?」
 薔とナナが振り返ってみると、窓の外には大勢の生徒や、先生方までもが立っており、真ん中に手を振る羚亜が立っていた。


 「薔く―――――ん!連れて来れる人、みんな連れてきたよーっ!」
 笑って手を振る羚亜の隣には、うっとりんこの愛羅も立っていて。



 「ちょっとーっ!悪魔ってヤツどこよ!?ぶん殴ってやりたいんだけど!」
 「果蘭姉さん、一人一発、お見舞いしてやりましょうよ!」


 「はわわわわぁ!すごい人数が集まってるよぉ!先生、感動しちゃったぁ!」

 「三咲さんが悲しむのは、ダメよ!」

 「ついに漫画みたいになったよ!でも、担任の出る幕なし!」

 「ちょっと〜、みんな背が高くて、薔くんが見えないんだよコレ〜。教頭〜、肩車して〜。」
 「はい!?」


 「わわわわわたくし、自慢のバットを持って参りました!」

 「みんな〜、ボクのことも見てよ〜。」



 などなど。





 「なんか切り離されてるからか、行けないとこもあったんだけど、俺ね、要さんとこけしさんが元に戻ったときのこと考えたら、閃いたんだ、」
 笑いながら羚亜は、叫んだ。

 「大切なものはやっぱ、大切なんだよ!みんな、薔くんがピンチだって言ったら、すぐに目を覚ましたよ!?」







 「学園一のアイドルに、なんてことすんじゃいっ、この悪魔―――――――――――っっ!!!!」









 「うぅっ、すごいですねぇ…」
 ナナは感動のあまり、泣いちゃった。


 「…学園一のアイドルは、ナナだろ。」
 薔はぽつりと呟くと、悪魔へ振り向き笑いかけた。


 「見えるか?これが世界だ。」











 …――“ひとりじゃない”、それは、

 面と向かって言葉にされるより、


 ふとしたときに感じたほうが、深く染み入るのかもね。













 『Everyone has gained the world.』

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