※第55話:Love(+Happiness!).40
そして、時間を少し遡ってからの、醐留権邸にて。
「ほ、ほんとうか?羚亜、」
羚亜の告白に、醐留権はめちゃくちゃ感動しておった。
「うん、今度要さんにも、紹介するね。同じ学校だけど。」
なんだかはにかんで、羚亜は愛羅のことを醐留権に報告していたのだ。
「そうか、私は安心したよ。羚亜は可愛いからね、女の子が放っておくはずがないんだ。」
「要さん、可愛いとか、今はあんまり嬉しくないよ?」
とか会話を交わしているふたりは、既にお風呂やなんかを済ませております。
「ねぇ、要さん、もう少し話がしたいから、今夜も一緒に寝ない?」
「そういうことなら、任せなさい。」
というわけでふたりは、しばし語らった後、眠りに就いたのでした。
――――――――…
外が騒がしい様子で、羚亜は目を覚ました。
「なんだろ?」
重たい目をこすりながら、耳を澄ませてみると、
「要!要はどこにいるんだ!」
遠くで、男性の声が聞こえた。
「え?だれ?」
羚亜は目をぱちくりさせる。
「あぁっ、必汰(かなた)さまっ、そちらはっ、」
ひどく慌てた使用人の声も響くなか、
「要ーっ!」
男性の声はだんだん、近づいてきた。
バ――――――――…ン
そしてとうとう、醐留権と羚亜が寝ていた部屋のドアが、勢いよく開けられちゃいました。
唖然とする、羚亜。
「かっ、要っ!」
ちょい息をきらしそこに立っていたのは、端正な顔立ちだが、背がいささか低い紳士であった。
紳士は、野太い声で叫んだ。
「要っ、お前はいつから、若い男の子をたらし込むようになったんだぁ―――――っ!?」
大声によって目を覚ました醐留権は、一言。
「あぁ、お父さんでしたか。」
(これが要さんの、お父さん?)
羚亜はまじまじと、要父を見つめる。
「それよりお前、その子はなんだ!?」
問いただそうとした父へ、
「お父さん、お忘れですか?この子は登紀子(ときこ)叔母さんとこの三男坊の嫁の姪っ子が中学時代大変世話になった担任の次男坊が佳作で入選した絵画コンクールで知り合えた親友の知り合いの知り合いの子です。」
キリッとした息子は、舌を噛むことなく(デタラメな)説明をした。
「そうか!登紀子叔母さんとこの子か!懐かしいなぁ!」
要父は、普通に納得していた。
どう考えてみても、登紀子叔母さんとこの子ではないというのに。
「しかし、要!しばらく見ないうちに、随分と立派になったなぁ!」
「今回は2ヶ月でしたけど、」
要父、というか先ほど名前明かされたんだった、必汰は、冷静すぎる息子に向かってとんでもないことを言いました。
「とにかくお前、明後日、つまり土曜日に、入籍してもらうから!」
「は?」
醐留権は険しい表情で、
(どうしよう?要さん、彼女いるのに…、)
ヒヤリとした羚亜は、慌てだした。
「あっはっは!」
低音の笑い声で、必汰だけが楽しげに笑っていたのでした。
It's not a case where it's laughing!
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