イケナイお持ち帰りレッスン












 とてつもない緊張感やドキドキと共に、ナナは玄関へと足を踏み入れた。

 「お……お邪魔、します……」








 担任教師である薔のマンションはかなりの高級感満載で、部屋のなかは彼と同じく心地の良いいい匂いがしていた。
 中にはまだ彼の感覚が残っているからか、濃くなった香気にキュンキュンと切なく疼いてしまう。

 ちなみにナナはここへ連れて来られるまでの車内で、「こけしちゃんのお家にお泊まりすることになった」という何とも不自然な電話を急遽母へと入れさせられた。
 電話口の母はどことなく上機嫌で、すんなり快諾はされたから一安心、なのか?
 お泊まりはすでに確定されているわけなのだが。


 ナナは鞄をぎゅむっと抱きしめ、玄関にてドキドキソワソワしっ放しだった。

 「何やってんだ?上がれよ、」
 落ち着きはらって促した薔は、伸ばした手で彼女が抱えていた鞄を強引に取り上げると、どこか妖しく笑って言葉にした。

 「言っておくが……生徒を連れ込むのはおまえが初めてだからな?」








 さらにドキッとしてしまったナナは、自分の鞄ではなく彼の背中を追いかけるようにして、恐る恐る靴を脱ぎ上がり口へ足を下ろした。

 「ただいま、花子。」
 薔は尻尾を振りながら駆け寄ってきた花子のあたまを、やさしくなでなでしている。

 (こんっな可愛らしい光景を、眺めることができたのはわたしが初めてなのかぁ……)
 拝みたいくらいにナナはしみじみともしてしまい、普段は見られることのできない光景にひたすらときめきを覚えうっとりと彼のあとをついていった。


 途中、

 「おまえはここで待ってろ。」
 「あっ、はい……」

 ナナには廊下で待機をするように命じて、花子のご飯の時間にするために薔はリビングへと向かって行った。
 リビングは見せたくないのかな?と一瞬考えてしまったナナは、すぐ隣にある部屋を見たとたんますます鼓動を加速させた。
 彼女は今現在、バスルームへの入り口の前にて待たされていたのだ。


 よくよく考えてみると、ここには連れて来られた目的がちゃんとある。

 (ほっ、ほんとうに、先生と一緒に、お風呂……入っちゃうの?)
 ナナは耳まで赤くして、俯いた。
 彼女が逃げたりはしないようにわざと、薔は鞄を掴んでリビングまで持って行ったのかもしれない。

[ 319/342 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]


戻る