奪われてゆく心まで
(はぁ〜、今日も残業したし、よく働いたよわたし…、でも明日はザザえもんスペシャルを観るために何としてでも定時で帰らせてもらおう!あの鬼上司が何と言おうとも!)
その日、3時間ほど残業をしてきたOLの三咲 ナナは、明日テレビで放送されるザザえもんスペシャルと鬼上司とやらに思いを馳せながら家までの夜道を歩いておった。
煌々と満月が浮かぶ夜に。
(残業手当てもつくし、来月はけっこうお給料いくかもしれないから、思いきってザザえもん映画のDVDをいくつか買っちゃおうかな!そう考えると仕事をくれる鬼上司にはちょっと感謝だよね!)
と、馳せる思いは映画のDVDと鬼上司への感謝の意にまで及んでいると、
どふっ!
誰かにぶつかった。
あれやこれやと考えすぎていたからかもしれないが、そこに人が歩いていたことは予想外であった。
「あっ!すみません!」
ナナが慌てて、顔を上げたところ、
「いってーなぁ…」
相手はいかにも柄の悪そうな不良少年だった。
しかも、3人で歩いているうちの1人。
君たち高校生か――――――――――っ!?
慌てる、ナナ。
「お姉さ〜ん、痛いよ?ここ、」
「うわぁ、骨折れたんじゃね?」
「慰謝料払う〜?」
と、3人はわりとベタな脅迫をしてくるが、
「君たちみたいな年齢の子が、こんな時間に夜道を歩いてちゃダメでしょうが!危ない!襲われるよ!?親友から借りた漫画でお姉さんそういうの見たよ!?お母さんが泣いてるよ!?あっ、お父さんかもしれない!おじいちゃんとかおばあちゃんかな?いやでも、担任の先生かな!?…わんちゃんとかねこちゃんとかはおうちにいる?だったらその子たちかもしれない!」
「はぁあ!?なんだよそれ!?」
ナナは何というか、説教を始めた。
「なんか、お姉さん、いいね…」
「おれたちとエッチなことしない?」
「しない!」
「え〜、いいじゃん、慰謝料だと思ってさあ…」
やがて、不良学生らは犯す気満々で迫り始め、
(にっ、逃げるって言っても、わたし足遅いし、どうしようーっ!)
ナナは絶体絶命か!?
と思いきや、そこへ、
「おい、」
ふと、端から堂々とした声が掛けられたのだった。
「俺の可愛い部下に何やってんだ?お前ら、」
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