貴方依存症


 あなたがいれば、生きていける。
 だから――――、
 あなたがいないと、生きていけない。
 一生あたしだけを、愛し続けてね。あたしは一生あなただけを、愛し続けてあげるから。


 歪んだ愛だと言うのなら、貫き通そうではないか。
 飾り気のない窓辺に置かれたサボテンが、月の光を浴びている。
 あたしはいつものように、最愛の人に抱かれていた。彼の名前など、知らない。知っているのはカラダだけ。
 それでもいいと思えた。あたしのカラダで、彼を満たすことができるなら。
 「っん………!」
 キスの最中に唾液が零れて、あたしは声を上げる。彼は容赦なく、舌を絡ませてくる。
 絡み合う舌の下では、乳房を掴まれていた。彼は指を乳首に押し当て、優しく円を描く。それが奥深くを刺激して、あたしは塞がれた口から、喘ぎを漏らしたかった。
 「んんっ………」
 やっとの事で、呻く。
 すると彼があたしから唇を離し、甘い声で囁いた。
 「次はココ………」
 指で乳首をねじ回す。
 「あぁんっ……!」
 解き放たれた口元から、喘ぎ声が漏れた。それを引き金にして、彼は胸に吸い付いてくる。
 「あッ………あッ……!」
 あたしは彼に抱きつき、いやらしく鳴いた。声は次々と、唇からあふれ出る。
 「あッ……ん、やぁんッ………!」
 汗が滲んだ。ピンク色だった乳首が、だんだんと赤みを帯びてくる。硬くなったそれを、彼は舌で転がすように舐める。
 「っはぁッ……!」
 感じながらあたしは、カラダを反らせた。胸を突き出し、もっと舐めてもらうために。
 胸で一通り遊び終えると、彼はあたしの股を割った。既にとろとろのその部分へ、顔をうずめてくる。
 「…………っあ!」
 舌が触れ、あたしはびくんとのけぞった。こんな恥ずかしい場所が、彼の舌で弄られるなんて――――、
 ビクビクと震えるあたしにはお構いなしに、彼は舌で雫を飲み込んでゆく。舌をなかへ挿入され、あたしの目からは涙がこぼれ落ちた。襲い来る快感が、神経を麻痺させてゆく。
 「あぁぁあッ……んんッ……」
 乱れ喘ぐあたしは、挿れて欲しくて仕方がなかった。硬く屹立した、彼の太いソレを―――、
 「ねッ……!きて………」
 ねだるように、甘い声を出す。カラダは快楽をとらえ、達することしか考えられなくなっていた。
 「お願いッ………!挿れて………」
 吐息混じりに、叫ぶ。
 彼は顔を上げると、あたしをその場へ押し倒した。上に乗ると、妖しく微笑む。
 「そんなに欲しいの?」
 コクコクと、あたしは頷く。彼は嬉しそうな顔をした。
 「じゃあ、イクよ?」
 そう言い放つと―――、
 「あぁぁあっ……!」
 痛みが押し寄せ、硬いモノが挿入された。熱い液体が、あたしのなかへ流れ込む。
 「あああッ…、やあぁぁあッ………!」
 彼が腰を振るたびに、奥深くを突かれ、あたしは叫びを上げた。彼はあたしに折り重なり、カラダを押し付けてくる。
 胸の小さな突起が、彼のカラダに触れる。意識が散乱とするほど、色んな快感があたしを刺激した。
 「ううぅッ……、あッ…、あ………」
 あたしは達したくて、懸命に彼に抱きついた。背中に爪を立て、腰を押し付ける。
 「あぁぁッ……!んッ…、イッちゃう………」
 えもいわれぬ快感が、カラダじゅうを駆け抜けた。
 「あうッ……!」
 そしておとずれる、絶頂。
 「あぁぁぁぁぁぁあっん………!」
 叫びを上げ、あたしは達した。


 快楽のあと。
 あたしは彼を、縛り付けた。赤い、糸では切れてしまうから、赤い縄で。
 「おやすみ………」
 静かに瞳を閉じる。

 彼はどこへも行けない。だってその足はあたしが――――――、
 これからもずっと、あなたはあたしだけのモノ。だからあたしも、あなただけのモノなのよ。
 離れられなくなった、これは愛の病。
 病名は、誰も知らない。
 月の光のカルテには、記されていることだろう。
 あなたなしでは生きられない、あたしは「貴方依存症」。




   Depend on you…

[ 15/236 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る