※※第351話:Make Love(&Amatory).212








 「そうか……やはり母の行方は掴めないままか……」
 屋敷の者から報告を受けた醐留権は沈痛な面持ちで、ネクタイを緩めた。

 「それもなんだけど要さん、ファッションショーはどうするの?」
 問題をいくつも抱えている醐留権に期日が迫りつつある問題を、羚亜は控えめに思い出させようとする。
 「何のことやらさっぱりだな。」
 「やっぱり……気にしてたの俺だけか。」
 醐留権は父が持ち帰った問題をすっかり忘れているようで、母の問題発覚の発端となった問題なのにこうも早く忘れられる精神には正直羚亜は感心した。
 しかしながら、人命が関わっている可能性もあり得るため、天秤にかけるまでもなく無理もない事態ではある。


 ファッションショーの件はおざなりにして、全力で母の捜査に取りかかるべきかと、思われた矢先だった。




 「要、お客様がいらしてるわよ?あら、羚亜くんもここにいたの。久しぶりね。」
 行方不明であるはずの母、洋子が、しれっと帰宅した。
 二度見した醐留権と羚亜は、唖然。

 「母さん……?携帯が繋がらなくなっていたのですが……」
 「そうなのよ、運河に落としちゃって、今日新しいのにしたばかりなの。」
 「……運河に携帯を落とす人、います?」
 「ここにいるじゃないの。」
 どういったシチュエーションで運河にスマホを落としたのかは定かでないが、母は行方不明になったわけではなかった。
 捜査をした結果行方を掴めなかったのも、特に本人の身に危険が生じていなかったせいですぐ近くに来ている情報が誰の耳にも入って来なかったからである。


 「ご無沙汰してます。」
 そして、母がお連れした客人とは、夕月のことだった。
 ここで醐留権はようやく、ファッションショーは決しておざなりにできない問題っぽいことに気づいた。

 「羚亜くん、別室で一緒にお菓子食べましょ。アマゾンのとか、いっぱいあるのよ?」
 「ア、アマゾンのお菓子……?」
 気を利かせた洋子は羚亜を連れて、その場をあとにした。
 ちなみにここは、要の部屋だった。



 「こちらこそ、ご無沙」
 「先生、」
 苦し紛れの挨拶を返そうとした担任を遮り、先ほどまでの優雅な物腰はどこへやら、夕月は厳しく詰め寄った。

 「これはどういうことなのか、説明していただきたい。」
 手には例のパンフレット……ではなく、Webに公開されているファッションショーの内容が表示されていた、夕月のスマホに。
 いつの間にWebまで!と思っている醐留権だが、期日が迫っているのだからWebくらい作成されていても何らおかしくはない。
 ただ出演者の記載がおかしいため、こういった状況になっている。

 「こちら側が納得できる理由を、どうぞ。」
 不敵に微笑んで見せた夕月は、じつはすでに洋子とはこの件について話をしてあった。

 エッチなやつではないお仕置きの、幕開けである。















  …――It's a beautiful counterattack!

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