※※第361話:Make Love(&Cross).220


















 日曜日はもともと、夕月と出掛ける予定があったため、メロンパン作りは土曜日の夕方より決行された。
 カメをあしらったメロンパンではなく、まずは王道のメロンをあしらったメロンパンでいくことにした。

 となれば、帰り道にちょっとした材料の調達も、必要となってくる。
 ちなみにメロンは、材料に含まれません。




 ナナはじーっと、メロンを見つめていた。
 メロンパンに必要ないと言われてしまったメロンだが、メロンがメロンでなかったら、メロンパンはメロンパンになっていなかったかもしれないのである(ややこしい)。
 けっこうなお値段がするのに、メロンパンの材料にはそもそも使われないメロンが少し不憫に思えた。


 「……焼くか?」
 「えっ!?」
 彼女があまりにも見つめていたので、薔は一玉を買い物カゴに入れてくれた。
 一玉を焼いてメロンパンもどきを作ってみたいと言うのなら無論、贅沢に使わせる気でいる。

 「メロンパンには必要ないのにっ……買うんですか!?」
 ナナは慌てて、彼の顔を覗き込んだ。
 「焼かなくても食えるんだから、いいだろ別に。」
 それこそ焼かずに食べたほうが美味しそうではあるが、薔は彼女を見てちょっと悪戯っぽく笑った。
 要するに、美味しそうに眺めていたから買ってあげたくなったというわけである。


 ほう……と彼の美麗さに見惚れたナナは一瞬、ここがスーパーマーケットなのも忘れて夢の国へといざなわれそうになった。
 メロンもメロンではなく、魅惑的な禁断の果実(それは本当はりんごだけど)に見えてくる。

 「おい、寝んなよ?」
 「寝てませんよ、薔に見とれてただけです……」
 薔はたしなめるために彼女の手を引っ張り、ばか正直に答えたナナは彼と一緒に歩いてゆく。
 メロンパンに必要な材料は、ナナが思っていた以上に少なかった。




 「うちの娘がこの世で一番幸せそうね。」
 たまたま、大量のお菓子を買い込みに来ていたナナ母は気配を消して、仲睦まじい娘カップルを入り口付近から見守っていた。
 あんな超絶美形を捕まえるとはさすがわが娘と改めてしみじみと実感しているナナ母は、現在、ブラックサンダーにハマっている。
 お菓子よりイケメンが大好きなナナ母だったが、野暮は嫌いなので声を掛けることなくお菓子コーナーへ向かった。
 ご機嫌なナナ母は夫のぶんのお菓子も大量に買うことにした。

 「そう言えばもうすぐあの子、生まれて初めての修学旅行ね……薔くんと。」
 なんてことを、呟きながら。

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