※※第356話:Make Love(&Keep).216
















 夜這いについては杞憂だったようで、屡薇はお昼時より少し前に迎えに来た。
 と言うより訪ねて来た。



 「待ってないって言うと思うけど、待ってたよね?」
 屡薇はさりげなく、彼女のアパートに足を踏み入れた。
 昼食をどうしようか迷っていた真依は何も不自然に思うことなく、彼を招き入れた。

 「待ってたよ!だって何時頃に来るのか全然わからないんだもん!」
 「ごめーん、聞いてくれれば良かったのに。」
 デートだとするなら常識的だと思われる時間にまさか迎えに来るとは、予想外で、真依は浮かれる心を鎮めようとして彼を怒った。
 屡薇はさらっと笑って謝ったが、彼女は本当は怒っていないことを知っていた。


 「ところで今日の昼飯、何?」
 「え?どこかに食べに行くんじゃないの?」
 「俺は真依さんの手料理が食いたいの。」
 「それならそうと言っておいてよ!ちゃんとメニュー考えたのに!」
 屡薇が昼時を狙ってきたのは、彼女の手料理が目的だった。
 だからこそ、迎えに来たはずがちゃっかり居座っている。
 真依は前もって言っておけば、ちゃんとメニューを考えておもてなしをしてくれたようだ。

 そうは言っても料理が得意な彼女は、冷蔵庫にある限られた材料を上手く選び、比較的簡単且つボリューム満点なメニューを容易に思い浮かべられた。


 「前もって言ってあったら、裸エプロンもオーケー?」
 「それは絶対にやだ。だって屡薇くん、襲うでしょ?」
 「うん、襲う。」
 屡薇は待望でもある裸エプロンに触れてみたものの、却下された。
 裸エプロンで炒め物とか揚げ物とかさせるんじゃないよ?といった戒めを込め、真依はじとっとした目つきで彼を見た。
 肌の露出が否応なしに多くなるというか半裸の状態で料理なんてさせないで欲しいが、裸エプロンで喜ぶ彼の反応はちょっとだけ見てみたい気もする、あくまでもちょっとだけ。


 「てか襲わずにずっと見てるんだったら、やってくれるってこと?」
 「やらないよ、恥ずかしい!」
 襲うのが嫌なのかなと気づいた屡薇は譲歩をして、いずれにせよ襲われそうなので変わらずに真依は拒否をした。
 ずっと見ているとはすなわち視姦のことで、料理が終わったら襲われるに決まっている。

 そうこうしているうちに、真依は何やら炒め物を完成させていた。


 「やっぱ真依さんて料理上手、すげえ美味そうなにおいしてる。」
 褒めているのではなく率直な感想を言っている屡薇の目の前、テーブルの上へと、

 「綾瀬くんに教えてもらったんだ。ほんとはここにシュールストレミングが入るらしいんだけど。」

 シュールストレミングが入っていないからこそシンプルで美味しそうなソテーが置かれた。

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