第40話:Love(&Lives).33





 ぱち

 ナナは、目を開けた。

 頬には、涙がひとすじ、伝っている。


 彼女の目の前で、薔も同時に目を覚ました。




 (泣くなよ、わたし!)
 とにかくナナは、涙を拭おうと慌てふためいたのだが、

 スッ―――――…


 自分で拭うよりそっと、伸ばした手で薔に涙を拭われた。



 すこしビクッとして、頬を赤らめてしまう彼女に、

 「ナナ、」


 微笑んで、薔は言った。




 「手…、掴んでくれて、ありがとな。」





 ぶわっ

 さらなる涙はあふれ出たが、ちゃんと薔は拭い続けていて、


 「同じ夢、見てたんだな、」

 やさしく彼は言いました。



 「おわぁあ…!よかっ、…っ、ですよぉ…!」
 泣き続けようとしたナナは、

 ぎゅっ

 抱きしめられた。


 そして、気づいた。



 (そう言えば、わたしたち、裸だよ!)






 「あ、あのぅ……、」
 「ん?」

 抱きしめられたまま、ナナは色々と振り絞りました。

 「なぜに、このようなコトに?」




 「けっこういつも、なってたぞ?」
 「そう、なんですか?」
 とにかくナナは、興味津々なんです。

 「おい、触んな、シたくなるだろ?」
 「ぎゃああ!」

 ナナは真っ赤っかになって、とっさに手を引っ込めた。


 「これは立派な、生理現象だ。」

 んでもって、目の前で、堂々と薔は言い聞かせます。




 「朝からヤるか?」
 「困ります、もうっ、服を着ましょうよーっ!」


 よかった、ラブコメっぽくなった。
 …のか?




 えー、朝からヤるのは、どうやらお預けのご様子です。









 ちゃんと服を着たナナは、リビングにおります。
 花子も優雅に、寄り添います。


 んでもって、ちゃんと服を着た薔は、キッチンにおります。

 いつもと変わらぬ風景ですが、たまにはでもいいから、逆になってほしい感は否めません。




 「花子ちゃーん!フッサフサだよーっ!」
 ナナについてのテンションのあれやこれやは、いい加減省きます。

 花子はなでなでされながら、気持ちよさそうに尻尾をゆらゆら振っております。


 そのとき、またしても、

 ちょん、

 テーブルの上にあるリモコンへと、花子が前脚を置いたのだ。


 「花子ちゃん、テレビ観たいの?」
 ナナのこの質問に、花子は尻尾をブンと振って答えた。
 ちょっとした、デジャヴである。

 「じゃあ、テレビ観よっか、花子ちゃん。」
 にこっと笑ったナナがテレビをつけると、特になんてことなくコマーシャルの最中だった。

 「ここでいいの?」
 そう尋ねると、花子は食い入るように、テレビを見つめている。


 ここでいいのだと悟ったナナは、そのまま花子と一緒にテレビを観ていた。




 すると、コマーシャルが明けた瞬間、とても懐かしい人物が画面に映し出されたのだ。



 ナナは、こころで叫ぶ。


 (夕月さ―――――――ん!!)



 流れていたのは、夕月のプロジェクトについての密着を追った、ドキュメンタリー番組であった。

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