第2話:Taboo.2
「暮中…、薔……?」
ナナは、混乱する頭のなかを、まとめ上げようと必死だった。
「どうして……、アンタが、ここに………?」
「ここは俺のクラスだ。」
(※本当にのちにわかりますが、ここは彼のクラスです。)
そういうことを、言ってるんじゃ……。
(ど、どうしよう!?)
頭のなかがパニック状態でも、ナナにはわかりきっていたことがある。
香牙が効かない相手には、ヴァンパイアのいかなる能力であっても為すすべがないということ。本来なら容易いはずの、“記憶の操作”を施せないということが。
焦った、彼女。
長い年月が培った、野性の本能はこう言った。
――ヤツを、殺しなさい――――――…
……………そうだ。
わたしは、死ぬことのない種族、ヴァンパイア。
恐れるものなど、なにもない。
何を今まで、血迷っていたのか。
“こんな人間なんて、殺してしてしまえばいいのよ。”
そういう目で、彼を見た。いや、見据えた。
しかし当の薔は、ナナには目もくれず、自身の机の引き出しを開けていた。
「アンタ、何しに来たの?」
最期にそれだけ、聞いてあげるわ。
「本を取りに来てやった。」
本………………?
(それって、まさか………)
「け、権力……………マニュアル…………?」
昨日読んでいた、あの恐ろしいタイトルの本のことか?
「あ?」
「う…………」
決心がぐらつく。
ナナは少しだけ後ずさった。
「…………………。」
無言の直視。
殺るなら、今しかない――――――…。
ナナは身構えた。
のだが、
「じゃあな。」
何と薔は、彼女に背を向けて帰ろうとしたのだ。
(な………………!?)
ま、待て!
こっちはお前を、殺す気なんだ!そんな簡単に背を向けられたら、立ち場がないんだよ!
動いた。
ナナは異様なスピードで先回りをすると、ドアのまえに立ちはだかった。
「待ちなさいよ。」
「あ?」
薔が、ナナの目の前で歩みを止める。
「見られたからには、生きて帰せないわ。アンタには、死んでもらう。」
かっこよくキメたつもりの、今のシーン。
…シーン―――――…
結果的にはこうなった(オヤジか)。
(あ、あれ……………?)
薔は、表情ひとつ変えない。
「アンタ、こわくないの?」
凄んだ後だというのに、ナナは恐る恐る尋ねた。
[ 16/550 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る