第20話:Game(+Kidnapping).18






 ―――…それはきっと秩序をもち、理にかなった、インモラリティ<背徳>。


 浮かぶように堕ちるは、妖しきサンクチュアリ<聖域>。








 カーテンの隙間からさしこむ朝日で、ナナは目を覚ました。
 なんだかものすごく、いい匂いがしている。
 眩しさに顔をしかめる間もなく、彼女は目を見開いて仰天した。


 あまりにも確かな、ぬくもりがあった。


 まだ薔は眠っていたが、なんと、彼はナナに、






 抱きついて眠っていた。






 (うぎゃあぁ――――――――――っ!!)

 動くことができないので、真っ赤になったナナはこころで大絶叫した。
 (あわわわわわ!こ、この場合は、どうしたらいいんだ!?)
 やわらかな髪が、喉もとにあたりやけに心地よい。
 くすぐったくも、あるけどね。

 (わぁぁあ!なんだかエッチとかいう以前に、とんでもなくかわいいんだけど!)
 ナナの、母性のほうの本能は刺激されすぎた。


 (いや、しかし、わたしは動けないよ!起きてくださるまで、こうしてるしかないよ!)
 そう思ったナナは、ドキドキの心臓をおさえこむよう必死になりながらも、ずっとそのまま薔を見つめていた。



 果てしなくながいようにも、ほんの刹那にも感じられた、こころ熱いとき。




「ん………………」
 やがて、薔は目を覚ました。




「ぉ………おはよう……ござい…ます……………」
 赤面しながら、ちいさく言ったナナ。

「あぁ、ナナか、」
 すこしだけ瞳を開けて顔をあげた薔は、抱きついたまま、



「おはよう。」



 と、微笑んだ。




 彼はナナに初めて、“おはよう”を言った。




 キュンとしすぎたナナは、絶句してさらに真っ赤になった。



「どーした?」
 無言の彼女を、細めた瞳で薔が見つめる。
 (うわぁあ!もう、このひとはいつも、近すぎるって!おカオ!)
 声も出せずに、ナナがそう想っていると、


「おまえはやたら、抱き心地がいいよな。」
 薔はつよく、彼女に抱きついた。

「……………………!」
 もはや、気絶寸前のナナ。
「まぁ、いつも俺の血、吸ってるからだな。」
 なんとまぁ、朝からこんな感じだった。

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