第18話:Game(&Rain).16






 手を伸ばせば、おそろしいくらいに、いまそこにいるあなたを抱きしめてしまいたい―――――――…



 またしても、月曜日はやってきた。

 朝はいつも通り、7時半だった。


 (あぁあ!一昨日の夜があまりにもエッチだったから、よくよく思い出すとめちゃくちゃ恥ずかしいよ!)
 赤面中のナナは、10分まえにスタンバイしていた。

 この日、空には、灰色の雲が朝から立ち込めており。
 なんだか、これから学校で起こるハプニングだかを、示唆しているかのようだった。



 2分まえに、薔が堂々とやって来た。
「おおおおおはようございます!」
 真っ赤のナナは、かしこまる。
「お前はまるで、メイドだな。」
 朝から、こんなことを言われていた。

 …………………はい?

 キョトンとする、ナナ。
「いっそご奉仕するか?」
 門に彼女を押し当て覗き込む薔は、またしてもイジワルな笑みを浮かべていた。


 キュンとしたナナの心臓は、はちきれそうで。

「朝からやめてください!」
 もはや、真っ赤どころではない。
「夜ならいいのか?」
 ………………ひぇぇえ!

 (やっぱり近いよ!おカオ!)
 キスされそうな距離だったが、とりあえずこのときはされなかった。
 残念だよね、たぶん。


「行くか。」
 この言葉のあと、ふたりは手をつないで歩きだした。






 雨が降り出してきそうな、予感すら、して。
 ナナはいつぞやの相合い傘に、想いを馳せた。

 (あのときすでにきっと、堕ちてたんだな――――――…)
 想い出してみるほどに、胸がくるしくなる。


 ふと見上げるととなりに、変わらずに薔はいた。
 変わったのは、手をつないでいること、かな?
 見た段階では。


「どーした?」
 …………………はっ!!

 ナナはあまりにも、見つめすぎた。
「なななななんでもないです!」
「そのわりには、物欲しそうな目してんぞ?」
 ……………ひゃあぁっ!


「っとにお前は、エロいな。」
 手をつないだままそんなふうに微笑んで、エッチなコトを言わないでください!
 ていうか、エロさでいきますと、アナタさまには果てしなく敵いませんて!


 こころで叫んで真っ赤になると、ナナは黙ってうつむいた。






 学校に、着いちゃいました。

 やっぱり見学者はいるので、ナナは始終うつむいていた。
 そんな彼女と並んで歩く薔は、やっぱり平然と堂々としていた。


 下駄箱、にて。

 靴を履き替えると、

「とりあえずお前、ひとりで教室行け。」
 と、ナナは言われた。

「はい……………?」
 目をパチクリさせている彼女に、

「俺には寄るとこがある。」
 流し目で伝えた薔は、教室とは逆方向へと歩いていった。



 (どちらへ、行かれたのだ?)
 気になって仕方なかったが、ナナはその気持ちを押さえ込み、教室へ向かったのであった。

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