第16話:Game(&Trip).14





 店のまえでおばちゃんに何度もお辞儀され、おそば屋をあとにして駅へ戻ると、タクシーがすこししてやってきた。
 眉毛が濃い、気さくな運転手だった。

「ちょっとぉ、お嬢さん!彼氏やたらイケメンだね!」
 がはは、と笑う運ちゃん。

 (彼氏じゃないってば―――――――っ!!)
 真っ赤になりこころで叫ぶナナだが、薔は平然としていた。

 荷物をトランクにあずけると、ナナはほぼムリヤリなかに押し込められ、となりに薔が乗りドアは閉められた。






 けっこう山道を走っていた。
 『鹿に注意!』
 という看板が、見受けられたりもした。

 (ちょっと!近いよ!)
 タクシーのなかでの近距離だが、まぁ、いつもと比べてみてよ。

 やたらいい匂いだった。

 タクシーの運ちゃんはひとりでマシンガントークを繰り広げており、バックではラテン系の音楽が流れていた。






 運ちゃんただひとりがしゃべりつづけ、とうとう、旅館に到着した。





 趣があるにも、ほどがある旅館だった。
 そして、センスもあった。
 混んでもおり、駐車場には高級車がひしめき合っていた。

「す、すご………!」
 くちをあんぐり開ける、ナナ。

「行くぞ。」
 荷物を持つ薔に、促された。


 狭いので、奥行きのある上品な入り口だった。
 ほぼ15時ちょうど、に、チェックインを済ませる。

 キレイだと校長が言っていた女将は、たしかにキレイだがどう見ても60歳はいっていた。
 しかし、着物がよく似合う女性だった。

 彼女は薔に、やたらデレデレしていた。
 当人には何とも思われていなかったが。




 ランクの高い旅館のためか、荷物は持ってくれたうえに部屋まで丁寧に案内された。
 部屋につくと、簡単に部屋の説明をされた。
 ちなみにこの旅館は、部屋ごとに造りが違っていた。


 ひろく落ち着いた本間に、ガラスで隔てられた次の間がある部屋だった。
 そのななめ左まえに、ベランダまでついていた。露天風呂つきで。


 ナナにとっては意味不明の説明を聞き終えると、ふたりっきりになった。

 はじめて眺める本格的な絶景に、大感動のナナ。



 高級旅館だから、血液は流せないよね。いくらなんでも。
 じゃあ、何事もないのか?
 どうなんだ?






 ――――――…それともまさか、血液、なしで?










 …………………at last?

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