第16話:Game(&Trip).14







 うるわしき青空の日に、厳粛なる儀式を執り行おう。





 第一体育館に、(出席しているうえで)たったふたりを除いたすべての生徒たちと、全教員があつまっていた。運がいいのか悪いのかこの日、林夏川 広志先輩は学校を休んでいた。夏風邪だった。
 ステージには、安そうなスーツを着た校長が百均で買ったネクタイをしめて、マイク片手に立っている。
 その傍らに、横っ腹をおさえた教頭が、渋い顔で立っていた。教頭はけっこう、髪がフサフサであった。


『よく来てくれたね〜。まぁ、みなさん、座って〜。』
 校長は声のトーンがやたら明るいため、上機嫌のようだ。
 生徒たちは全員、床に座った。体育座りで。


『いやぁ〜、本当にね〜、校長先生は、ナイスな優勝賞品を用意しちゃったんだよ〜。だからはやく、渡したいよ〜。』
 校長はステージのうえを、ウロウロした。マイクのコードを引きずりながら。

『にしても、ちゃんと来てって念をおしたのに、あのおふたりだけ、来ないよ〜。このまま来てくれなかったら、みんなでここで泣くしかないよ〜?』
 どうやら泣くのは、連帯責任になるらしい。

『どうしちゃったんだろ〜?なんか、すごいコト、妄想しちゃうよ〜。』
 校長は、変態面においては普段通りだった。


『今日こそ本当に、マンガ喫茶に行くしかないの〜?』

 しゃべりつづける校長に、ほとんどの学校メンバーは(いったん黙ってくれないかな?)と思っていた。

『マンガ喫茶の電話番号、忘れちゃ』
「おい、」


 ザッ――――――…




 体育館の入り口から、堂々とした姿で薔が、猫背のナナの手をひいて歩いてきた。

「来てやったが?」

 すすしげな彼とは逆に、ナナは耳すら真っ赤であった。


 ぎゃぁぁぁぁあっ……………!

「きゃあぁ―――――――――――っ!!」

 大絶叫する生徒たちは、

 (三咲さん、うらやましすぎるって!)
 とも、こころで叫んでいた。


『よかったよ〜。ありがたいよ〜。でもいまの登場シーン、ぜひともビデオカメラにおさめたかったよ〜。』
 校長のほおはすこしさくら色をしていたが、だれもなんとも思わなかった。




 そんでもって、ナナはスカートのためステージには飛び乗れないから、体勢は変わらぬままふたりしてステージにあがっていった。

[ 168/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る