第14話:Game(in Infirmary).12




「い、いや、でも薔さんはちゃんと助けてくださったので、本当にありがたいです!だから、なにも悪くないです!」
 ナナは明るく声を張り上げた。


「助けてねーよ。」
 薔はナナを見る。
 その瞳は、どこか切なげだった。



「そんな、目を、しないでください………………」
 かなしくて、息ぐるしくなるナナ。

「わたしは、本当にありがたいんです…………!だから、アナタさまは確かに、わたしを助けてくださいました……………!」
 必死で、言い聞かせるよう、穏やかに叫ぶ。



「だから、足なんてもうぜんっぜん、痛くないです!忘れました!」
 ナナは笑った。


 ギュ―――――…


 すると薔は、彼女に抱きついた。





「もうつけさせねーよ、俺以外には。」
 「は、はい……………」
 ナナはそっと、薔の肩に手をおく。


「そういや、濡れてたな。」
 そして離れようとした薔を、ナナが引き留めた。

「おい、」
 ちからを込めて、抱きしめる。

「わ、わたしなら、大丈夫です!」
 顔はいくらか赤かったが、つよくそう言った。



「……………………。」

 無言のまま、抱き合う。


「足、痛くねーか?」
 しばらくそうしていると、薔がさきに口を開いた。
「ぜんっぜん、痛くないです、いまは。」
 ナナはやさしく言った。


 すると薔は、顔をあげた。

「ナナ、」

 再び、名前を呼ぶ。


「なんのちからもねーが、キスしていーか?」


 その瞳は、うるんでナナを見つめていた。





「は、はい…………」
 ナナが返事をすると、ゆびさきがほおに添えられる。


 チュ――――――…


 やがて、くちびるは触れ合っていた。




 何回かくちびるを離したが、何度も押し当て合った。
 ときどき、瞳を開けて、視線を絡めるように。

 時間をかけてキスをしていると、最終的には舌すら絡め合っていた。


「ん………っ、」
 ナナは、鼻から声を漏らす。

「は……ぁっ……………」
 吐息はくちびるから漏らして、キスに夢中になった。




 そしてようやく、そっとくちびるが離された。






「あ、の…………」
「なんだ?」
 抱き合ったままだったが、ナナは申し立てる。


「ちからがないなんて…………とんでもないです…………………、薔さんのキスは……………スゴイです………………」
 と。


「そうか。」
 囁いた薔は、ナナをつよくやさしく抱きしめた。




 保健室で、やたら恋愛チックだった。
 このとき帰ってこなかった葛篭先生は、立派な役目を果たしたと言えよう。





 しかし、どうやって帰るかだよ!
 途方に暮れるナナだが、そのくらいならすぐに解決するよ?




「今日も送ってやるからな。」
「はい……………?」

 ほらね。




 あし痛い彼女を、いったい薔はどこまで送ってくれるのかな?








 ……kiss in the Infirmary.

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