第1話:Taboo.1




 〈この物語の概念〉

 ※概念:あるものに対していだく大ざっぱな意識内容。



 “愛”とは、

 なんなのか、

 “生きる”とはなんなのか、

 おそらくそれらは、

 とてつもなく繋がっていて、

 ときとしてあまりにもかけ離れてはいるが、

 ちからをもってすれば、

 “死”すらも、

 鳥肌がたつほどあたたかく魅せます。


 “愛”とは、

 “生きる”とは、

 たとえ無慈悲においても、

 はかりしれず感動的なものであって、

 そこに“死”は、

 いろをそえてゆき、

 「証し」を永遠に、

 かかげてくれるものなのです。



 なんのために生まれてきたのか、

 だれのために生まれてきたのか、

 ではないのかもしれないが、

 ほんのわずかでも、

 なにかのため、

 だれかのため、

 にと、

 こころからそう想えたとき、

 それは「生きる意味」ではありませんが、

 「生きてゆく意味」にはなります。

 しかし「生きてゆく意味」は、

 きっと、

 “生きる”ことへと繋がります。




 生きる希望を見失ったとき、

 生きることに疲れ果てたとき、

 それでも、

 「死ねばらくになる」

 だなんて、

 かんちがいしないでください。


 だって、

 根本的なものをかざしてみると、

 「死んでらくになる」ためには、

 “生きる”しかないのです。



 だから、

 どうか、

 「なにかのため」に、

 「だれかのため」に、

 “愛”をもって生きてください。

 それがまさに、

 いちばんの、

 「じぶんのため」に、

 なるのです。



 “愛”をもって“生きる”うち、

 やすらかで本当の“死”はいずれそこに、

 美しきいろをそえます。

 永遠に生きてゆく、

 「証し」をともにかかげて。



 おなじ世界にいます。

 みんなみんな。

 「死ぬ」ということ以外は。


 死んでしまってはなにもありません。

 やすらぎもしあわせも。

 それはおそらく、

 不確かですが絶対に。


 本当の“死”に、

 めぐりあうまで、

 “愛”し、

 そして“生きる”まで。




 “愛”こそいのち、

 “生きる”ことこそすべてです。




 だから、

 声には出しませんが、

 くるしいほどにいえます。


「生まれてきてくれてありがとう」。

「生きていてくれてありがとう。」




 ずっと、

 永遠に、

「愛しているからね」。










 ※要するに…………、

『わたしはとんでもなく長いあいだ、生きてまいりました。

 あなたに出会うまでの人生は、おそらく無意味なものです。

 しかしあなたに出逢えた瞬間、それは輝かしくも涯てしない、意味をもちえたのです。


 ……だから、ありがとう。



 ほんとうに、大好きです。』













 この概念は、およそ辞書には載っておりません。
 しかしたったひとつだけ、描かれている辞書があります。

 ご安心ください。
 たったひとつ、だけですが、その辞書は、だれもがこころのなかに、抱きかかえております。

 それを引くのも、逆に惹かれてみるのも、あなた次第です。

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