※第12話:Game(is Love?).10





「興奮したか?」
 耳もとで囁くように、そう、聞かれた。
「はぁっ………!」
 そっと、口に当てられていた手は、離される。
「生きて……っ、良かっ…です…………!」
 ナナは嗚咽とともに、泣き腫らした目で想いを振り絞り言ったのでした。





「お前、震えてんな。」
 耳もとで、囁きは続く。
「よく……、ご無事で……………、」
「屋上程度じゃ、死なねーよ。」

 薔のくちびるが、ナナの耳に触れた。


「あの……、おケガは…?」
「無えよ。」

 くちびるは耳をつたい、吐息が愛撫した。



「アナタさまは、本当に、人間、ですか………………?」
 およそ噂が人間ではないが、ナナは安心のあまり、さらに泣きだした。



「残念だったな。」
 皮肉を込めて言われたが、そのイジワルな言い方もまた、愛おしく。


「うっ…………うっ……………」
 ナナはあふれる涙を、拭おうとした。

「待て。」
 その手を制止すると、薔はまたしても囁いた。




「俺が拭ってやる。」




「ひっ……っ、」
 もはや泣きじゃくっているナナなのだが、薔はいったん彼女から離れると、向き合うようにして立った。


「あー、お前、もうゆびだけじゃ無理だぞ?」
 最初は根気よく、ゆびで涙を拭っていた薔だったが、

 スッ――――――…

 すこしだけかがむと今度は、舌でナナの涙にキスをした。


「お前の涙は、なんの味もしねーな。」


 ナナは唖然として、ピタリと泣き止んだ。






 月明かりのなかで、向き合って立っていた。
 ナナはまだしゃくりあげていたが、薔はそんな彼女を、ひかりを背にしてただ静かに、ずっと見つめていた。



 するとふいにナナは、つよくそっと抱きしめられた。


「ナナ、」


 抱きしめながら、薔は甘く囁く。




「血液交えてもいいから、お前とヤりてえ。」




 え―――――――…?









「家に来い。花子ならもう、眠ってる。」

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