「お願い!」
頭を下げる友人に困ったな、と思った。廊下を通る人々は此方を奇異の目で見て行くし。正直勘弁して欲しいと見付からないように小さく溜め息を溢した。
「癒月だけしか頼める人がいないの!今度の日曜日一緒に男バスの試合見に行ってー!」
彼女が云うには、日曜日のバスケの試合を一緒に見に行こう、ということだ。黄瀬くんが試合に出るからどうしても見に行きたいらしい。私がバスケ部と必要以上に関わることをしないのを知っているから最初は私以外の友達に声を掛けた。しかし、みんな予定があり行けないらしい。そこで私に声が掛かった。
『でも私、バスケはちょっと…』
「一緒に来てくれるだけでいいの!もう癒月しかいないの!お願い!」
さて、困った。黄瀬くんの誘いを断っておいて違う友達の誘いを受けるのは何とも頂けない。それに征十郎に見付かったらどうしようか。
「一生に一度のお願い!」
手を合わせて頭を下げる彼女に今度は隠さずに溜め息を吐いた。彼女は諦めないだろうな、と思いながら。
『―――…仕方ないなあ、』
「本当!?ありがと!」
征十郎に見付からないように気を付けなくちゃなあ…。後ろの方で隠れて見てよう。

迷う、迷った
(一生に一度のお願い、とかに弱いんだよね)


title//花畑心中

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