「今度の日曜日試合があるんス!」 いきなり興奮したように云って来た黄瀬くんに一瞬思考が停止した。そして何故私にそのことを云うのか、それを考える。多分、彼が云いたいのは――― 「だから見に来てくれないスか?」 『やっぱり』 「え?やっぱり?」 『こっちの話だから気にしないで』 やっぱり誘われてしまった。折角黄瀬くんが誘ってくれたんだ。行くべきなんだと思う。 『それで試合、だっけ?』 「うん。癒月っちに格好いいとこ見せるっスよ」 『ごめん』 「…え?」 謝ると彼は驚いたように目を見開いた。即答されるとは思わなかったんだろう。それに申し訳なく思いながら再度謝った。 「…即答っスね」 『うん、ごめんね』 「そんな謝んなくていいっスよ。でも何で?用事があるとか?」 『征十郎にバスケは見に来るな、って云われてるから。だから行けないや』 征十郎には以前から云われていた。だから征十郎がキャプテンになったと聞いても一回も応援に行ったことはない。当然バスケ部の人の名前もわからない。噂で聞いたり、女子の間でその名前を聞くくらいだ。実際に知っているのは征十郎と黄瀬くん。それ以外は知らない。多分征十郎が私にバスケを見に来るなと云うのは、私と征十郎の世界に第三者が入って来るのを避けたかったからなのかもしれない。私に征十郎以外の人間を教えたくなかった。だからバスケ部の人達に私を紹介しなかったし、彼もバスケ部の人達を紹介しなかった。私は征十郎以外を知らない人間になった。そこに黄瀬くんが入って来たのは征十郎の計算外だったかもしれないけど。 「―――…赤司っち、」 彼はそう呟いて奥歯を噛み締めた。
今日もありふれた平和でした (また赤司っち…。俺じゃ赤司っちには敵わないんスか?)
title//花畑心中 |