黄瀬視点

ずんずんずんずん、目的の彼がいる場所に向かう。今は部活中。目的の彼はシュートの練習をしていた。俺は彼の後ろで立ち止まる。気配に気付いたのかボールを持った手を下げた。彼はゴールを見詰めたまま、此方を振り向かなかった。
「何の用だ?」
「癒月っちに怪我させたの…アンタっスか?」
その言葉に答えずに、彼は再びボールをゴールに放った。綺麗な弧を描いてシュートが決まる。それに若干苛立った。
「答えてよ」
「そうだ、と云ったら…お前はどうするんだ?」
目を見開いて彼の胸ぐらを掴んでいた。体格の違いから、簡単に彼は爪先立ちになった。彼の冷たい無機質な瞳と、俺の黄色い瞳がぶつかる。
「それが本当だとしたら―――…俺はアンタを赦さない」
「…そうか」
彼のその澄ました顔が余計に俺の癪に触る。乱暴に彼の胸ぐらから手を離した。彼が数歩後ろによろめく。周りでは部活の連中が俺と彼の騒ぎを唯見詰めていた。
「俺は前々からアンタが気に食わなかったっス。だから、バスケで決着つけましょうよ。―――…赤司っち」
「…いいだろう。俺も前からお前は気に入らなかったんだ。勝手に癒月に近付いて、」
癒月は俺のものだ、彼の唇がそう動いた。狂気を孕んだ彼の赤い瞳が俺を睨み付けた。

恋とは卑屈な笑顔に消えるもの
(気に食わない、気に入らない、利害が一致した)


title//花畑心中

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