「さて、今日は何の日でしょ〜か!」


練習後の部室へ荷物を片付けに行ったら、扉を開くなり未だ練習着のままのスガにそう問われた。
……何の日って、勿論知っているし、何故かスガの肩にかかっている本日の主役と書かれたタスキを見れば一目瞭然だけれど…。
苦笑気味にそれを見ている大地や後輩たちは、もうほとんど帰り支度を済ませていて、一先ず着替えなさいなとふわふわの髪を撫でると、ポカンと私を見つめた後に素早く着替えを始めた。


「大地、部誌ここで書いときたいから、鍵は私が閉めるわ」

「おう、じゃあ頼んだ」


鍵を受け取って机に向かうと、じゃあお先にーとみんながぞろぞろ帰っていく。それにお疲れーと返しながら部誌を書き進めて行くと、キリの良いところで背中にずしっと体重が乗った。


「ちょっとスガ、重たいんだけど」

「なぁー…俺まだお前には言われてないんだけど…」


拗ねたような物言いにくすりと笑って振り返ると、着替えを済ませたスガが頬を膨らませている。
日付けが変わった瞬間にメールしたでしょ?と少し意地悪をしてみると、ずいっと詰め寄られてスガと机の間に閉じ込められた。


「…それ、本気で言ってるなら、俺すげぇ拗ねるけど、」

「……ふふ、そんなわけないでしょう?」




「誕生日おめでとう孝支。生まれて来てくれて、私と出会ってくれてありがとう」



膨らんでいる頬に両手を添えて、そう言ってキスを一つ送れば、にししと嬉しそうに笑った彼にぎゅうぎゅうと抱き締められた。


……鞄の中のプレゼントの出番は、もう少し先みたい。







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