ぽんっと間抜けな音とともに飛んで行ったコルクの弾は、赤い箱の小さなラムネのお菓子をぽとりと台の下に落とした。はいおめでとうって射的の屋台のおじちゃんが差し出してくれるお菓子をしぶしぶ受け取って、ほんとは一つ上の段の大きなくまのぬいぐるみが欲しかったのに…とそれを見つめてむくれた。

「ほら、無理だって言ったじゃん」
「……でも、欲しかったんだもん」

はいはい残念だったねって雑に私の頭を撫でた倫太郎をじとっと見上げたら、そんな私の視線を受けて倫太郎はふはっと吹き出す。ちょっとムカついてさらにむくれた私にくつくつと笑った倫太郎は、鶯色のシャリっとした肌触りの涼しい浴衣の袂から小銭入れを取り出して、おじちゃんに一番大きな硬貨を一枚差し出した。

「えっ、倫太郎、あれ取ってくれるの?」
「さぁ、どうだろうね」

硬貨と引き換えにおじちゃんから数個のコルク弾と銃を受け取った倫太郎は、しっかりと弾を込めると右手で銃を握りこんでぐいっと上半身を前へ乗り出す。少し後ろに下げた左足でバランスを取りながら狙いを定めて打った弾は、こつりと当たってぬいぐるみの身体を傾けて、さらに重心を崩すべくくまの右手のあたりを狙い撃つと、ぐらりとバランスを崩したぬいぐるみは台の下に落ちてきた。

「うそ!すごい!取れた!!」
「はい。じゃあさっきのラムネと交換ね」
「えっ、良いの!?」

思いのほかあっさり手に入れたふっかふかの大きなぬいぐるみと、さっき私がゲットしたしょぼい景品を交換してくれるらしい。手のひらサイズのお菓子とくまさんを交換して、ほんとに良いの!?返せって言われても返さないよ!?ってもう一回念押ししたら、ふって笑った倫太郎が別にいーよってラムネを一つ口に放り込んだ。

「つーか、俺がこんなデカいぬいぐるみ持ち歩くとか…ちょっとね、」
「えっ?なんで?可愛いじゃん?」
「可愛いくねぇし」
「可愛いよ!ほらちょっと持ってみて!」

えぇ…って言いながらくまさんを抱えた倫太郎がすん…と遠い目をして、その組み合わせが思ったよりちぐはぐになったから、…なんか……ごめんね、ってそっとくまさんを受け取った。






.




- ナノ -