ウイングさんは待ち合わせのきっかり15分前に現れる。
たとえシャツの裾が出ていようとも、息を切らしていようとも。

そして息を整えて大体時刻通りに到着するわたしを迎えてくれるのだ。
シャツの裾は出ているけれど。


なんで知っているかって、待ち合わせの何分前にあなたが現れるのか、
わざわざ植え込みの陰からビルの陰から噴水の陰から観察したからだ。

(噴水の時はちょっと無理があるかもしれないと思ったけれど、バレなかったみたい。)


シャツの下に隠れた、細いだけでなく引き締まったあなたの体、
無駄のない筋肉の一筋一筋をなぞるとくすぐったそうに漏らす声、
カーテンの向こうからはいりこんでくる、早朝の青い空気。
お弟子さんのため急いで身支度するあなたとのその日最後の戯れ。
当たり前のようにある、次への約束。


あなたを見送ったあとあなたの匂いのシーツにくるまって、
陽が高く高く上がるまで、わたしが眠っていることをあなたは知らない。
たまに少し滲む涙を、あなたは知らない。




「nameさん。」


そう、わたしを呼ぶやさしいあなたの声。
温かな眼差し。日に透ける黒髪。


いまは午後のカフェでデート中、
これはあなたへの恋文の下書きです。



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