ハグの日2017






怪我を負いひどく熱を持った男に半ば強引に引き寄せられた腕の中で妙はおずおずとその背中に腕を回した。
包帯を巻いただけの裸の背中には無数の傷跡が今も残っている。
触れた指先で一筋辿る。妙の首筋に顔を埋めた男がそれに気づいて顔を上げる気配がした。
けれどそれには気づかぬふりをして、一つ二つと口で語られたことのない男の過去をまるで辿るように。
無数に残る傷と引き換えにしてでも護りたかったもの。

「お妙」

耳のすぐそばで響く低い声。この声に弱いと最近知った。
縋るように腰に回された太い腕に力がこもるのを感じて、応えるように妙も広い背中を抱きしめる。

男の古傷ごと。





2017.09.09





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