「物事には意味がある」

 ある男が口にしたそれに、彼等は深く頷いた。男は言う、物事には意味があるのだと、そして、その過程にももちろん意味があるのだと。
 その男はいわゆる教祖と呼ばれる類の人物だった。その強烈なカリスマ性と不遇とも言える生い立ちからの奮起に、多数とは言えないまでも、気付けば十数人の信者達が男の下に集っていた。
 男の口癖は第一声のそれであり、次の口癖は「実行することでそれは伝わる」であった。

「世の中は不平で満ちている。何故か?強者は弱者に目もくれないからだ」

 そうだそうだと頷き同意する彼等は、男に多大なる信頼を寄せていた。それは様々な場面で彼等を救い導いた男の行いの結果であり、また、男の人徳そのものでもあった。

「今こそ、弱者の真意を世の中に伝えるべきだ」

 つまるところ、男の言い分はこうである。強者によって虐げられた弱者達は、死ぬほどの気持ちでいるのだと。それを伝えるためには、目を引くような死に様を見せつけなければならないのだと。

「さあ、いざ。1、2、3、」

 男の信念と掛け声と共に、十数人の信者を連れて、彼等の体は、小さなアパートの一室に宙吊りになった。





『──昨夜未明、都内のアパートの一室で、集団自殺がありました。遺書等は一切見つかっておらず、警察は原因不明として捜査を──』

 男の信念は伝わることなく、また、真意など全く伝わらなかったその結末を、彼等は知らない。





_2010

1、2、3、



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