私は馬鹿な娘ではない。少なくとも、何が正気で、何が狂気なのかの区別はつく。そうしようと思えばその境だって、てんてんと往き来することだって出来るのに、敢えて狂気に身を置く私という存在は人々から見れば狂気そのものなのかもしれない……
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 ……三歳……イルミ兄様の髪まだ短かった頃……
 私は母様と父様の腕に抱かれても泣き止もうとしなかったし、チットモ笑おうとしなかった。笑った時ですら、それは私の髪の長さがイルミ兄様と同じ丈なのが嬉しかったか、イルミ兄様が自分にだけあの底無しの眼差しを向けていることに至福を感じていたからに違いないのです。
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