例えば好きというでしょう、

仗→承、ジョルミス、ジョナディオ、ジョセシ




エバーグリーン

「お前は、康一君や億泰を大事にしてやれ」

そう言う承太郎さんに、なんとなく、ほんとうにただなんとなく、友人について訊いてしまったことを少しだけ後悔した。

「昔、旅をした時に友人がいてな」

かきょういん、彼の名はうつくしい響きを持って承太郎さんの口から発せられた。

「花京院さん、」
「ああ、法皇の緑というスタンドを持っていた。初対面の時にそいつのことを光ったメロンだと俺は言ったんだが、あいつは旅の終わりまでずっとそのことを根に持ってやがった」

まったく陰険なやつだぜ、くつくつと笑う承太郎さんの語る彼は、もうこの世にいないらしい。DIOとの戦いで腹に風穴を開けられて死んだそうだ。なかなかすげェ死に方だと思う。
けれど壮絶な話にも関わらず、かきょーいんさんのことを語る承太郎さんの瞳の色は、この世のどんな緑よりも優しいグリーン。常磐よりもなお、深い緑。

(ずるいじゃないスか、花京院さん)

死んじまったら、承太郎さんの中でアンタは永遠だ。






しからば君は

「最近、豆乳を飲むのが好きなんですよ」
「あァ、なんだか女の子の間で流行ってるよな」

脇腹をボリボリと掻きながらミスタが返事をするが、その視線は窓の外を歩くベッラの脚に釘づけになっている。

「健康にいいっていうんで僕とブチャラティで買いに行ったんですけど、紅茶だのバナナだの結構種類があって。なかなか決められずに迷ってしまいました」
「バンビーナかよ、お前らは」

角を曲がって消えた美脚に残念そうな顔を隠しもせずにミスタは視線を僕へと戻す。

「僕はとりあえず苺と紅茶、それからブチャラティがやたら勧めるもんですからごまはちとかいうのを買ってみたんですけど」
「お味の方はどうだったんだ?」
「ごまはちとかいうのは正直僕の好みじゃあないですね。苺と紅茶はなかなかでしたよ」

そーかい、と呟いてミスタの視線は窓の外へ。ミスタが熱心に見つめているのは向かいの花屋の売り子、の立派な胸の谷間。
僕はとりあえず、ちっとも構ってくれない浮気性な恋人のクッキーを全てかたつむりに変えることに腐心することにした。

その三日後、教室のドアを開けるなりミスタは眉間に皺を寄せてこう言った。

「おいジョルノ、お前がこないだうめぇっつってたごまはちだけどよォ〜。はっきり言わしてもらえばありゃアバ茶と同レベルだぜ」

僕はとりあえず、話を聞いているようで聞いてない恋人に制裁を下すべく、その趣味の悪い帽子をハトに変えたのだった。






星屑ミッドナイト

この海の底に沈んでから、どれくらい経ったのだろう。

忌々しいとはいえ太陽が昇るのも沈むのも判らない深海の底では、時間も何もあったものでもない。
俺は腐敗臭のしてきたジョナサンの頬をそっと撫ぜる。

(このまま腐らせたらこいつは永遠に、)

この安らかな笑顔のまま朽ちてゆくのだろう。

「満足そうな顔をして。間抜けな顔だな」

溶け落ちそうなホーリーグリーンの目。艶をなくしたブルネット。
それでもこいつの穏やかな表情と言ったら、虫唾が走る。

屍生人にしてやろうか、首だけの死体が屍生人と化したらどうなるのだろうか、好奇心がゆらりと鎌首をもたげるが、何故かそれを実行に移そうとは思わなかった。

「俺は永遠を生きるぞ、ジョジョ」

だから貴様は眠っていろ。

生き残ってしまって途方に暮れているなど、こいつに見透かされるのは癪だった。






夜を歩く

「きれいだ、」

吐息が漏れるような、ほとんど囁きとも言っていい響きで、シーザーは呟いた。
その金髪は月の光を反射して冷たく煌めいている。

「なんでそんな小せェ声なんだよ」

そう言った俺の声が、やたらと反響するものだから。
俺とシーザーはなんだか可笑しくなっちまって、ふたりして笑い合う。

それでも静かな夜空。永遠に届かない星の住処。

「こうしてると、世界にいるのが俺達だけになったみたいだとは思わないか」
「天国に来ちまった気分だぜ」
「夜を天国だと形容するのはお前くらいなもんだぜ」

またシーザーが笑う。
どこまでも澄んだ空気。しっとりと溶ける闇の中、俺達はふたりぼっち。


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140416




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