独伊


「幸せだね、」

イタリアが笑う。両手いっぱいに花を抱えて、イタリアは笑う。

「ねえ、ドイツ。幸せだね。平和になって、幸せだね」

色とりどりのデイジーをその腕に抱いて、踊るようにくるくると回っては笑う。

「綺麗だね、幸せだね。どんなことがあっても、花は咲くんだよ」

くるくる回る、イタリアの腕から赤が、橙が、黄色が、こぼれ落ちる。

「枯れて、咲いて、また枯れて、それでもまた咲くんだ。あはは、人みたい、俺たちみたい」

黒い石にはらはらと、散った花びらが色を落として。

「ねえドイツ。死体の上にも、花は咲くんだよ」

幾千幾万もの死を看取ったその腕が、宙に花をばっと放り投げる。
見渡す限りの十字架に捧げるには、両手いっぱいの花は悲しいほどに少なすぎた。




130418




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