じゃあ新型扇風機は新居に | ナノ

じゃあ新型扇風機は新居に



そもそも今時の女子高生が何を考えているかさっぱりわからないというのに沖田の考えていることがわかるわけがない。俺の中であの生き物は女という括りでも女子高生という括りでもなく、独立した存在なのだ。言ってしまえば世間一般から少しズレている。いいや、かなりズレている。電波。不思議ちゃん。宇宙人。……まあ、思考がまったく読めないことを汲み取って貰えればいい。そんな生き物、沖田にまつわる俺の話を少し聞いてほしい。

これから愚痴を吐きたいのかと言われそうだがこの実、俺は沖田という生き物に射落とされてしまい、あの手この手でアプローチを仕掛け沖田の彼氏の座を手に入れた男だ。ついこの間まで義務教育を受けていた相手に一生懸命になる俺は相当痛い大人だったに違いない。制服姿で助手席に乗せたときは浮かれる前にイヤイヤ援交じゃねえからと誰にともなく言い訳した。情けない。だって沖田の性格に何あれどれっきとした未成年で身長も胸もまだまだ発展途上で、世間的にやべえなと16そこらのガキに必死になる自分には何度引いて何度頭を抱えたか考えたくもないが、恋愛なんてそんなもんさと開き直ってみると楽になった。俺は自分に正直に生きる。(ただ、同僚の坂田にバレて一生ロリコンと呼ばれるのだけは回避したい)


恋愛なんて毛ほども興味ないと思われていた沖田も何だかんだで土方さん土方さんとついてくるし、外に連れて行けば案外喜んでくれる。触れることも触れられることも得意じゃないんだろうけど、少しずつ内側に入ることを許されている。いつまででも待てるし待ちたいと思える。あんまり笑うことはないけれどまあそのぶっちゃけ相当可愛いわけで惚れたもん負けを痛感する。憎まれ口もご愛嬌ってことで。俺の心はいつからこう広くなったんだ。

本来、俺の好みは落ち着いた品のある女で、知性があると高ポイント。年齢は同年代か少し上だと好ましい。実際これまでそういう人を選んでお付き合いしてきたわけで。年下で童顔でマイペースで頭は弱くて体つきは貧相で、そんな対極に興味をもった時点でもう本気だったんだと思う。成人して社会人になって社会の歯車としてあくせく働いて、世の中は本音より建て前が多いことも社会は作り笑顔と嘘でつくられていることも知っている。たまの休みは寝てたら終わるし上司は理不尽だし景気はよくなる兆しがない。おまけに今年の夏は馬鹿みたいに暑い。つまりは楽より苦が多い。俺が高校生の頃はもっと世界が美しく見えていたと思う。世の中にはもっと希望とか正義が溢れていると信じていた気がする。そして、いつの間にか当たり前のように忘れていった必死になることや夢中になること、闘争心や甘酸っぱいときめきとかドキドキとか、俺から廃れていったものたちをひっくるめて現れたのが沖田なんだと思う。ほんとうに宇宙人なんじゃないかと思う。出会いはわざわざ話すまでもないくらいのものだったんだけどどうしようもなく革命的だったんだ、ほんとうに。なんだこれいい年してすげえ恥ずかしい。ロマンチストか。それでいいわ。


……いや惚気話をしたいんじゃなくてだな、俺は沖田の誕生日プレゼントの話がしたいのだ。困っている。正直に言うと何を送っていいものかさっぱりわからない。化粧品やアクセサリー、洋服やバッグといった王道が潰えた時点でもうお手上げである。 今まで付き合ってきた女はそういう王道の品を贈れば喜んだし、女の流行りには疎くても店に行き店員に人気商品を聞けばまあ外れはないし。女子高生は何が好きかと考えてみても女子高生だって欲しがるものは服やアクセサリーだろうし。そこでいや待て俺、と思い出したエピソードがある。そうだ、先日パンケーキが流行っていると聞いて行ってみるかと誘ってみたら蕎麦屋がいいと真顔で返された。この間、この映画有名な少女漫画が原作なんだってなと話題を振ったら、へえ最近は黒魔術大全しか読んでなくてと突っ込むタイミング逃したくらいさらりと言われたのだって記憶に新しい。
別に、沖田の好きなものを全く知らないわけではないし、ゲームとか低反発枕とか、欲しがってるのは知ってるがそれは彼氏が送るもんじゃないだろう。親かよ。その他思いつくものと言えば駄菓子類、ジャンプ、ジャージ……ダメだ、考えるほどやってくるコレジャナイ感。いや、確実にコレジャナイ。年上として、いいや男として気の利いたものを送ってやりたくて考えてみても悲しきかな。何だよもういっそ婚約指輪でもプレゼントしてしまおうかと思った自分にはドン引きしたね。ああわかってる。もういっそストレートに聞きますとも。


「お前って誕生日何か欲しいものねーの?」
「え、買ってくれんの?」
「買える範囲なら」
「扇風機!細長いオシャレなやつがいい」
「……ほらきた」
「何がですか?」
「彼氏からの誕生日プレゼントが扇風機って」
「えーだって土方さんが欲しいもん聞いてきたんだし。じゃあ最新式のエアコンでいいや」
「何がじゃあだよ」
「えー……じゃあ、うーん、その」
「その?」
「土方さんが欲しい」
「は」
「みたいなこと言うと喜ぶもんなんです?男って」
「ふざけんなよ本気にしただろ!マジで婚約指輪贈ろうかと思ったわ!」
「本気にしてもいーですけど、あ。指輪はきっかり給料3ヶ月分で」
「は」
「シンプルなのがいいかな〜でもギラギラしたのもいいかも。でっかい石とかついてるやつ」
「あ、おう。おう??!!?!」







土方「マジかよ!??!?」というわけで沖田誕生日おめでとう2013。結婚しろ。

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